公立病院

公立病院の現状と課題：地域医療の中核と抱える問題点

公立病院は、都道府県や市町村などの自治体が運営する病院、診療所、歯科診療所を指し、地域住民の医療を支える重要な役割を担っています。2021年10月1日現在、全国には4,375の公立医療機関が存在し、外科、内科、小児科など幅広い診療科を備え、地域医療の中核として機能している場合が多いのが現状です。

公立病院の運営と特徴

公立病院は、地方公共団体の条例に基づき開設、運営されており、地域住民への医療提供を目的としています。そのため、利用者の多くは地域住民や勤務者ですが、地域外からの利用も可能です。

施設の運営責任者は施設長、開設者としての最高責任者は首長であることが多いです。予算や決算は自治体の他の事業と同様に議会の承認が必要で、地方自治法に基づいた調達や契約手続きが行われます。職員の多くは地方公務員ですが、地方独立行政法人化された病院では公務員ではないケースもあります。

公立病院を取り巻く問題点

近年、公立病院は深刻な問題に直面しています。最大の課題は財政難です。地方自治体の財政悪化や医師不足を背景に、統廃合や民間への譲渡といった再編が進んでいます。2011年までの5年間で、全国の公立病院数は413減少し（全体の8.3%減）、その背景には、赤字経営や医師不足による診療科の縮小などが挙げられます。

累積赤字は2009年度には2兆1,571億円に達し、10年前の倍近くに膨れ上がっています。高コスト体質も指摘されており、建設費や人件費が高額なことが経営を圧迫しています。地方独立行政法人への移行も検討されていますが、退職給付引当金や債務超過の解消が課題となっています。

他の医療機関への影響

公立病院の高コスト体質は、周辺の民間医療機関への影響も及ぼしています。人件費が高いため、民間医療機関から人材が流出する傾向があり、競争を激化させています。また、同一市町村内に公立病院と民間病院が共存する場合、救急搬送において公立病院が優先される傾向があり、民間病院への患者流出を招き、民業圧迫につながる懸念があります。

さらに、公立病院の統廃合による大規模化は、周辺の民間医療機関に大きな打撃を与えます。新設された大規模な公立病院に患者が集中し、地域医療全体のバランスが崩れる可能性があります。

社会医療法人の役割

これらの問題に対応するため、2007年には社会医療法人が創設されました。社会医療法人は、地域医療を担いつつ、効率的な運営を目指し、公立病院の問題解決に貢献する役割を担っています。

まとめ

公立病院は地域医療の重要な担い手ですが、財政難、医師不足、高コスト体質といった課題を抱えています。これらの問題を解決し、持続可能な運営を実現していくためには、自治体、医療関係者、そして国民全体の協調的な取り組みが不可欠です。今後の公立病院の改革動向に注目する必要があります。

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