兼元藤兵衛

兼元藤兵衛

兼元藤兵衛（かねもと とうべえ、1894年10月15日 - 1964年6月19日）は、日本の柔道家。講道館9段。

生涯

瀬戸内海の直島で網元の家に生まれ、幼少より柔術を学ぶ。旧制大川中学校時代に講道館へ入門し、初段を取得。1914年に武道専門学校へ入学。

武専では、後に昭和天覧試合を制する栗原民雄や山口孫作らと切磋琢磨し、磯貝一、永岡秀一らの指導を受けた。恵まれた体格と稽古熱心さで立技・寝技ともに長じ、1918年の大正天皇御大典奉祝伏見宮ご台覧試合に出場。将来を嘱望されるも、稽古中の膝の負傷により休養を余儀なくされ、焦りから完治前に稽古を再開したことが、後々まで膝の故障に悩まされる原因となった。

1918年に武専を卒業後は、金沢医学専門学校や石川師範学校などで教師を務め、その後、郷里の香川県に戻り後進の指導にあたった。

1920年、北海道に招聘され、北海道帝国大学や旧制札幌第一中学校などで師範を務める傍ら、兼元柔道塾を創設し青少年の育成に尽力。1924年には全国中等学校大会で札幌第一中学校を優勝に導き、1934年には全国高専柔道大会で北大予科を優勝させた。

指導者として活動する傍ら、1924年に大日本武徳会より教士号を受け、1929年には御大礼記念天覧武道大会に出場。青木武や須藤金作、栗原民雄といった強豪との予選を勝ち抜くことはできなかったものの、指定選士として出場を果たした。

兼元の指導は厳しくも情熱的であり、島本勇蔵や森口二郎など多くの優秀な門下生を輩出。松崎太平と共に北海道の柔道振興に尽力し、戦前には東北・北海道、樺太対抗試合の開催を実現。戦後は札幌柔道同好会を結成して北海道柔道界の再興を図り、東北・北海道の対抗試合を復活させた。

北海道柔道連盟では理事長として、北海道柔道界を牽引し、その功績から1958年に講道館9段に昇段。1964年に69歳で逝去後、門下生たちが「兼元会」を結成し、その遺徳を偲んだ。1976年には同会から『兼元藤兵衛』が発刊されている。

人物

温厚で控えめな性格であり、得意技について問われた際には「これといって得意な技はありません」「立っても一通りの技はしますが、強いて言うならば寝技でしょう」と答えていた。

功績

半世紀にわたり北海道の柔道界を支え、多くの門下生を育成した。その指導は、北海道柔道の礎を築いたと言える。

関連事項

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