内地延長主義

内地延長主義とは

内地延長主義とは、日本統治時代の台湾と朝鮮において、日本本土（内地）と同様の制度を植民地に適用するという統治政策の主張です。これは、植民地を日本の領土とみなし、日本の法体系を受け入れ、平等な統治を目指すという考え方でした。

台湾における内地延長主義

台湾では、1896年に「六三法」が制定され、台湾総督に法律と同等の命令を発布する権限が与えられました。これにより、総督は行政、立法、司法の三権を掌握し、台湾は「特別統治」下に置かれました。

第一次世界大戦後、民族自決主義が高まる中、原敬首相は「内地延長主義」を主張しました。原は、台湾を内地と同様の制度で統治すべきであると考えており、この考えは、当時「大正デモクラシー」が進展していた国内情勢や、朝鮮での三・一独立運動の勃発という状況と相まって、実現の機運が高まりました。

1919年、初の文官総督として田健治郎が台湾に赴任し、「内台融合」、「一視同仁」を掲げ、漸進的な内地延長主義を推進しました。1920年には地方制度改革が行われ、州、市、街、庄に官選議会が創設されました。また、1922年には「三一法」が改正され、原則的に日本の法律が台湾にも適用されることになりました。さらに、「治安警察法」が施行され、台湾人官吏の特別任用や、内台共学、内台共婚も認められるなど、制度面での内地の同化が進められました。

しかし、内地延長主義は、文化的な同化も伴うため、台湾独自の文化や伝統の喪失につながるという懸念も生じました。そのため、台湾人留学生の中には、当初は内地延長主義に賛同していたものの、後に台湾の特殊性を求め、自治を主張する動きも出てきました。林呈禄らは、「六三法」の撤廃ではなく、内容の変更を求め、台湾人自治のための議会設置を主張し、「台湾議会設置請願運動」へと発展しました。

朝鮮における内地延長主義

朝鮮では、1919年の三・一独立運動後、斎藤実が新総督に就任し、「文化政治」を掲げ、内地延長主義を採用しました。原敬首相は、朝鮮も内地と同様の制度を適用し、同化を進めるべきだと主張しました。これにより、言論や集会の自由が一部認められ、地方議会選挙を含む朝鮮人の政治参加の拡大が目指されました。

しかし、第一次大戦後の景気後退により政策が転換され、増税策が採用されたことで朝鮮人の抵抗運動は活発化し、自治拡大も縮小されました。

内地延長主義の評価

内地延長主義は、植民地を日本本土と同等に扱うという考え方に基づき、制度面での平等化を目指しましたが、実際には文化的同化を強制する側面も持ち合わせていました。その結果、台湾や朝鮮の民族意識を高め、独立運動につながる要因となったとも言えます。また、この政策は、植民地支配の正当化の手段として利用された側面も否定できません。

内地延長主義は、単なる制度の移植ではなく、複雑な政治的、文化的、社会的な背景の中で展開されたものであり、その影響は今日まで続いています。植民地支配の歴史を考察する上で、重要なテーマの一つと言えるでしょう。

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