円応寺

円応寺は、神奈川県鎌倉市山ノ内にある臨済宗建長寺派の寺院です。山号を新居山といい、地元では「新居閻魔堂」「十王堂」とも呼ばれています。鎌倉時代に作られた閻魔像や冥界の十王像が安置されており、その存在感から多くの参拝者を集めています。

歴史

円応寺の創建は、一般的には建長2年（1250年）とされています。開山は建長寺を開いた蘭渓道隆の弟子である桑田道海（智覚禅師）と伝えられていますが、実際には桑田道海が1309年に亡くなっていることや、建長寺の落慶よりも前に創建されたことなどから、創建当初から禅寺として建てられたのかについては疑問が残ります。

創建当初、円応寺は現在の場所ではなく、由比郷見越岩（鎌倉大仏の東側）に建てられました。その後、ほどなくして滑川の川岸に移転したとされています。現在、鎌倉市材木座5丁目には、新居閻魔堂跡を示す石碑が残っており、当時の閻魔堂が滑川の川岸付近にあったことを示しています。また、滑川の下流部が別名「閻魔川」と呼ばれるのは、この閻魔堂に由来すると伝えられています。

本尊の閻魔像は、「新居閻魔堂」として人々の信仰を集めましたが、元禄16年（1703年）の元禄大地震による津波で建物が大きな被害を受けました。翌年、現在の山ノ内に移転し、建長寺の向かいに位置する小高い場所に再建されました。この地は、元々建長寺の塔頭である大統庵があった場所です。

伽藍

円応寺の伽藍は、以下のようになっています。

本堂：本尊の閻魔像や十王像などが安置されています。
山門：寺の入り口に建てられた門です。

文化財

円応寺には、多くの文化財が所蔵されており、特に以下のものは重要文化財に指定されています。

木造初江王坐像：仏師幸有によって作られた像で、写実的な表現が特徴です。
木造閻魔王坐像：高さ190.5cmの閻魔像で、「笑い閻魔」とも呼ばれています。頭部のみが鎌倉時代の作で、体部は江戸時代のものです。
木造倶生神坐像：人の善悪を記録するとされる倶生神の坐像で、阿形像と吽形像の2体があります。
木造奪衣婆坐像：弘円によって作られた像です。
木造鬼卒立像：地獄で亡者を責める鬼の像です。
木造檀拏幢：「人頭杖」とも呼ばれる閻魔王の杖です。

この他にも、閻魔王、初江王以外の十王像8体（江戸時代）、地蔵菩薩坐像、智覚禅師坐像などが安置されています。

閻魔像にまつわる伝承

円応寺の本尊である閻魔像には、以下のような伝承が残っています。

笑い閻魔：運慶が地獄に落ちた際、閻魔大王から「自分の像を作れば生き返らせる」と言われ、蘇生後に笑いながら彫ったため、閻魔像も笑っているような表情になったという伝承です。
人食い閻魔：円応寺が滑川沿いにあった頃、閻魔像は瘧を治すご利益があるとされていました。ある日、瘧にかかった子供を連れた親が「この子の願いを聞いてください」と願ったところ、「この子を召し上がってください」と聞き違えて子供を食べてしまったという伝承です。

交通

円応寺へは、北鎌倉駅から神奈川県道21号横浜鎌倉線沿いに鎌倉駅方面へ徒歩約15分です。

まとめ

円応寺は、鎌倉の歴史と文化を感じられる寺院です。特に、その表情豊かな閻魔像や、十王像、そして様々な伝承は、訪れる人々に強い印象を与えます。鎌倉観光の際には、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

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