円柱のイラム

円柱のイラムとは

円柱のイラム（Iram of the pillars）は、古代アラビアに存在したとされる伝説的な都市であり、イスラム教の聖典『クルアーン』や物語集『アラビアンナイト』にもその名が登場します。この都市は、アード族の王シャッダードが天国の楽園を地上に再現するために、長い年月をかけて建造したとされています。しかし、神の預言者フードからの警告を軽視した結果、アラーの怒りを買い、ついには都市ごと滅ぼされる運命に遭ったとされます。このような背景から、円柱のイラムは「滅ぼされた民」の物語の一部となっています。

概要と歴史的背景

円柱のイラムは、アード族に関わる伝説の一つであり、彼らは自らの栄光を称えるために非常に豪華な住居や宮殿を建設しました。都市には金や宝石を使用した芸術作品が多数存在し、まさに富の象徴でした。街は壮観な柱で装飾され、まるで天上の王国のような美しさを誇っていたと伝えられています。

しかし、神の教えを無視した王や住民たちに対する神の怒りがもたらした結果、一夜にして都市は廃墟と化しました。このように、円柱のイラムはただの理想郷として語られることが多いですが、実際には警告の象徴としての意味合いも持っています。

都市の所在

円柱のイラムの正確な所在地については、現在に至るまで諸説が存在します。

1. アレクサンドリア説
これは、エジプトのアレクサンドリアが円柱のイラムの位置であるとするもので、同様の柱が立っている様子が観察されているといいます。古代の記録によれば、アレクサンドリアには豊富な柱を備えた遺跡があり、これがイラムとの関係を指摘しています。

2. ダマスカス説
次に、シリアのダマスカスがイラムの跡地であるとの説です。アード族がダマスカスに都市を建設し、その後の歴史的変遷により現在のダマスカスへと発展したとの見解があります。この説によれば、ダマスカスの古名も円柱のイラムに関連しているとされています。

3. 南アラビア説
最後に、イエメンのハドラマウト地方にイラムの残骸があるという説が最有力とされています。この地では、神に逆らった民が滅ぼされた末にイラムの伝説が語り継がれ、現在の地名もその影響を受けていると言われています。

名称の由来

「円柱のイラム」の「イラム」は、実際には何らかの意味を持つ言葉であり、アラビア語では「人の背丈ほどの道標」を指します。また、様々な読み方が存在し、地域の文化や住民の背景に応じて解釈が分かれます。アラム（Aram）という読みは、アラム人に由来し、都市の住民を知らしめるものとして考えられています。その他、アリム（土に雨が降らない土地の意）、イルム（白歯の意）、アルンム（柱のある町の意）といった読み方も存在し、それぞれがこの伝説の多様性を示しています。

結論

円柱のイラムは、多くの物語に彩られた伝説の都市であり、その存在は数世紀にわたり人々の想像をかき立てています。神の警告を無視した民の運命を語るこの都市は、いまだに多くの研究と探求の対象ではあります。歴史的な真実と伝説が交錯する中で、円柱のイラムはアラビア半島の神秘と教訓の象徴として、今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索