冨永ボンド

冨永ボンドは、1983年生まれの日本の画家、現代アート作家です。彼は、木工用接着剤に水性塗料を混ぜ合わせて描くという、他に類を見ない独創的な技法「ボンドアート」の創始者として、国内外で注目を集めています。

ボンドアートと「つなぐ」テーマ

福岡県出身の冨永は、福岡デザイン専門学校でアートを学びました。そこで彼は木工用ボンドを画材として使う可能性に着目し、試行錯誤の末に「ボンドアート」の手法を確立しました。この技法は商標登録もされており、彼のアート活動の象徴となっています。

彼の創作テーマは「つなぐ」です。これは、画材としての接着剤が持つ物理的な「接着」の機能と、アートを通じて人や地域、文化とつながりを生み出すという社会的な意味合いの両方を表現しています。

活動スタイルも独特で、従来の美術館やギャラリーでの展示だけでなく、ショッピングモールや百貨店の特設会場、音楽イベント、野外フェスなど、多種多様な場所で観客の目の前で作品を制作する「ライブペイント」を積極的に行っています。これにより、アートをより多くの人々にとって身近な存在にし、アーティストと鑑賞者、あるいはアートと社会とを「つなぐ」試みを続けています。彼の抽象画のモチーフは、すべて人間を主題としています。

多久市での地域活動

冨永は福岡で活動していましたが、結婚を機に佐賀県多久市へ移住しました。これを契機に、彼は多久市での地域活性化にも深く関わるようになります。特に、かつては賑わっていたものの、近年は閑散としていた多久駅前の京町商店街の状況を目の当たりにし、アートによる街づくりの可能性を提案しました。

彼は、閉店した店舗のシャッターや壁面などに絵を描く「ウォールアート」を中心とした観光促進プロジェクト「エノグアートプロジェクト」を立ち上げます。しかし、プロジェクトの推進は容易ではなく、活動資金の確保や、当初は商店街内部に存在した反対意見など、様々な困難に直面しました。それでも、彼は粘り強く行政や地域住民との対話を続け、「さが段階チャレンジ交付金」といった制度を活用しながら、地道に活動を進めていきました。その熱意と努力が徐々に実を結び、次第に協力者が増え、当初反対していた人々からも協力を得られるようになるなど、アートを通じて地域を「つなぎ」、街に新たな活力を生み出す取り組みは着実に進んでいます。

国内外での活動とメディア

冨永ボンドは国内外で精力的に作品発表を行っています。個展は岩田屋三越、みやざきアートセンター、ゆめタウン佐賀（サガテレビ主催）、イオンモール福岡など、国内主要都市で開催される他、2017年にはアートの本場フランス・パリのGallery Collection Priveeでも個展を開催し、国際的な評価も得ています。

また、アートフェアへの出展も積極的に行っており、アメリカ・ニューヨークのART EXPO NEW YORK 2014やフランス・パリのArt shopping 2016 La Carrousel du Louvreといった国際的なイベントで単独ブースを出展するなど、世界に向けてボンドアートを発信しています。

アート活動に加え、メディア出演も多く、特にラジオでは自身の冠番組を持っています。NBCラジオ佐賀で2015年から続く「冨永ボンドのRADIOボンドバ」や、RKBラジオで2018年から始まった「冨永ボンド アートレディオ」などを通じて、アートや自身の活動について語り、ラジオのリスナーとも「つな」がりを築いています。

独創的な技法と「つなぐ」という普遍的なテーマ、そしてライブペイントや地域活動といった多様なアプローチにより、冨永ボンドはアートの新たな地平を切り開き続けています。

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