冬色の街

冬色の街（ふゆいろのまち）

「冬色の街」は、日本の歌手である桜田淳子によって1978年12月にリリースされた、彼女にとって通算25枚目のシングル盤レコードです。当時のアイドル歌謡シーンにおいて、既に確固たる地位を築いていた桜田淳子のキャリア中期における重要な一枚と言えます。

制作背景と楽曲情報

本作の制作にあたっては、当時新しくディレクターを担当することになった人物から、ある明確な方向性が示されました。それは、「ヨーロッパ的な雰囲気を纏ったメロディーを桜田に歌わせたい」という意向でした。この斬新な方針を受け、作曲家として白羽の矢が立ったのが、これまでにも桜田淳子の楽曲を手掛けてきた中村泰士です。

中村泰士が桜田淳子の楽曲の作曲を担当するのは、1974年にリリースされたシングル「花占い」以来であり、実に4年と4ヶ月ぶりという長いブランクを経ての再起用となりました。これは、新しいサウンドへの挑戦とともに、過去に実績のある制作陣との協力を図るという、当時の制作側の戦略を示すものと言えるでしょう。中村はディレクターの意向に応えるべく、叙情的かつ洗練された「ヨーロッパっぽい」旋律を紡ぎ出しました。

作詞は、歌謡界において数多くのヒット曲を生み出してきた橋本淳が担当しています。橋本はその筆致で、楽曲のタイトルにもある「冬色の街」を舞台にした情景や心情を、繊細かつ詩的に描写しています。

そして、楽曲の編曲は、当時多くのアイドルやアーティストの楽曲アレンジを手掛け、その手腕が高く評価されていた萩田光雄が担当しました。萩田は、中村泰士によるメロディーと橋本淳の詞が持つ世界観を最大限に引き出すべく、緻密なオーケストレーションやサウンドデザインを施し、「ヨーロッパっぽい」雰囲気をより強調するアレンジを完成させています。表題曲「冬色の街」の収録時間は4分00秒です。

収録曲

シングル盤には、表題曲「冬色の街」に加え、カップリング曲として「メッセージ・ラブ」が収録されています。この楽曲もまた、編曲はA面と同様に萩田光雄が手掛けています。

冬色の街
作詞：橋本淳
作曲：中村泰士
編曲：萩田光雄
収録時間：4分00秒

メッセージ・ラブ
作詞：一ツ橋けい子
作曲：小杉保夫
編曲：萩田光雄
収録時間：3分55秒

「メッセージ・ラブ」は、作詞を一ツ橋けい子、作曲を小杉保夫がそれぞれ担当しており、A面とは異なる制作陣によって生み出された楽曲です。萩田光雄による共通の編曲ながらも、「冬色の街」が持つヨーロッパ風の雰囲気とはまた違った、当時の歌謡曲らしい魅力を持った楽曲となっています。

まとめ

「冬色の街」は、桜田淳子のディスコグラフィーにおいて、制作体制の変更や新たな音楽的方向性の模索が垣間見える興味深い作品です。新ディレクターの意向を受けた「ヨーロッパ的な旋律」と、中村泰士の久々の作曲、そして橋本淳の叙情的な作詞、萩田光雄による丁寧な編曲が見事に融合し、当時の日本の歌謡曲としては一線を画すような、洗練されたサウンドが実現しました。このシングルは、1978年末から1979年にかけて発表された楽曲として、当時の音楽シーンの一端を彩りました。

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