出挙

出挙（すいこ）について

出挙は、古代から中世にかけて日本に広がった利子付きの貸借制度で、特に農業の推進に寄与していました。その起源は、稲や粟の種子を保管する者が農民に貸し出し、収穫時に利子を加えて返済させる行為に見いだされます。この古代からの慣習は、国内外の農業社会における基本的な取引形態の一つと言えるでしょう。

発生と背景

出挙の慣行は、世界中の農業社会において早期から存在していたと考えられています。これは、農業生産性を高め、持続可能な農業を奨励する狙いがあったためです。中国でも、古くから似たような習慣があり、日本でも同様の慣習があったとされています。特に、古代日本の地域統治者である首長が、種稲を農民に貸与し、収穫の一部を進上させる形が典型的でした。

日本書紀には、646年に「貸稲」という表現が登場しており、これが出挙の概念の先駆けと見なされることもあります。この時期には、利子の慣行が既に存在していたことが伺えます。

律令における出挙の実態

8世紀初頭に施行された律令では、「出挙」という語が既に見られ、これによって出挙の制度が公式に確立されました。律令では、公的出挙と私的出挙を明確に区別し、財物や稲粟によって異なる取り決めがされていました。たとえば、財物の場合、60日ごとに8分の1の利子が設定されており、年利は約75％にも達しました。また、稲粟の場合は、私出挙が年利100％、公出挙が年利50％までの利子が許可されていました。どちらも複利は禁じられていました。

都市においては、財物の出挙が特に活発であり、平安時代の文献には、利子による経済的困窮を抱える人々の様子が記述されています。また、奈良時代の正倉院文書には、多くの出挙に関する貸借証文が残っており、当時の財物出挙の重要な記録として評価されています。

出挙の租税化とその影響

本来、出挙は農民を支援する意義を持っていましたが、次第に地方機関による公出挙が財源として利用され始めます。特に、国府などの機関は、公出挙を利用して農民から強制的に貸し出し、利子を課することで税収を得るようになりました。この過程で、出挙は名目上は租税として扱われていきます。たとえば、720年には公出挙の利子率が引き下げられたものの、数年後には元の高利に戻されました。

平安時代に入ると、公出挙が地域財源としての役割を果たすようになり、土地に基づく租税徴収の流れが見え始めます。しかし、この公出挙が崩れ始めると、富裕層による私的な出挙が強まる事態となり、特に地方における富の集中が加速していきました。

中世における出挙の変遷

中世に入ると出挙は貨幣の貸借、すなわち利銭出挙へと移行し、より商業的な側面が強まりました。また、在地の富豪たちによる私出挙も継続され、この私的形式は 単なる貸付金融に留まらず、租税的な性格も持つようになりました。室町時代には、利銭出挙から純粋な商取引としての貸付金融へとシフトしていく時代背景が見えます。

このように出挙は日本の経済と社会構造において重要な役割を果たし、時代ごとの変化を通じてさまざまな形態へと進展してきました。出挙は、農業経済から金銭経済へと進む過程で鍵となる要素の一つであり、連綿とした歴史を織りなしています。

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