出沢明

出沢明（でざわ あきら）は、日本の医学界において、特に整形外科の分野で重要な足跡を残した医師である。現在は帝京大学の教授として教鞭を執る傍ら、臨床現場でも活躍している。彼の業績の中でも特筆すべきは、腰椎椎間板ヘルニアの治療法である「経皮的内視鏡腰椎椎間板ヘルニア摘出術（PED）」を日本に紹介し、その普及に貢献したことにある。

出沢氏は千葉大学を卒業後、整形外科医としてのキャリアをスタートさせた。国立横浜東病院の整形外科院長を務め、地域の医療に貢献。さらに、千葉市療育センターでは通園センター長として、子供たちの健やかな成長を支援する役割も担った。その後、帝京大学に移り、講師、助教授を経て、2004年には同大学の教授に就任した。同年には、帝京大学付属溝口病院で副院長補佐と整形外科長を兼任し、病院運営と診療部門の要職を担った。

出沢氏の名前が広く知られるようになったのは、2003年に「経皮的内視鏡腰椎椎間板ヘルニア摘出術」、通称PED（Percutaneous Endoscopic Discectomy）を日本に導入した功績が大きい。腰椎椎間板ヘルニアは多くの人々を悩ませる疾患であり、その治療法は常に進化が求められていた。PEDが導入される以前、内視鏡を用いたヘルニア摘出術としては、MED（Microscopic Endoscopic Discectomy）と呼ばれる手法が一般的だった。

従来のMEDは、全身麻酔下で行われ、約16ミリメートルの皮膚切開を伴う手術だった。内視鏡を用いてヘルニア部分を摘出するものの、患者は術後に約1週間以上の入院と、その後の加療・静養が必要とされていた。

一方、出沢氏が日本に紹介したPEDは、局所麻酔下での手術を可能にした点が画期的である。切開する皮膚の範囲は、従来のMEDと比較して約半分程度に抑えられる。この手術では、特殊なピンセットのような器具を使い、より狭い範囲からヘルニアを摘出することができる。切開が小さく、局所麻酔で行われるため、手術中や術後の患者の痛みや身体への刺激を大幅に軽減することが可能となった。

PED手術の大きな利点は、その回復の早さにある。多くの患者が入院期間をわずか1日程度に短縮でき、術後の加療や静養にかかる時間も大幅に短縮された。これは、日常生活への早期復帰を目指す患者にとって、計り知れないメリットをもたらす。

さらに、PEDはヘルニアの再発予防にも効果が期待されている。一般的に、椎間板そのものには再生能力が乏しい。MED手術のように比較的大きな切開を行うと、その手術痕がそのまま残りやすく、椎間板の中心にある髄核が再び外に飛び出し、約5%から10%程度の確率でヘルニアが再発するとされていた。しかし、PEDは切開範囲が極めて小さいため、椎間板へのダメージを最小限に抑えることができる。これにより、椎間板の構造がより保たれやすく、ヘルニアの再発リスクを低減させることにつながると考えられている。

出沢氏が日本に紹介したPEDは、腰椎椎間板ヘルニア治療における低侵襲手術の普及を大きく加速させた。その先進性と患者への負担軽減効果から、PEDは多くの医療機関で採用されるようになり、また、その革新的な手法はテレビ番組など様々なメディアでも取り上げられ、広く認知されるようになった。出沢明氏は、整形外科医として、教育者として、そして医療技術の導入・普及におけるパイオニアとして、日本の医療発展に貢献している。

もう一度検索