出石そば

出石そばとは

出石そばは、兵庫県豊岡市出石町を中心に食されている、地元で愛される蕎麦料理です。その歴史は江戸時代中期に遡り、信濃国（現在の長野県）から出石藩に国替えとなった仙石政明が、蕎麦職人を連れてきたことが始まりとされています。当初は信州そばとして親しまれていましたが、時代とともに独自の進化を遂げ、現在では「皿そば」という独特のスタイルが確立されています。

皿そばの誕生と特徴

現在の出石そばは、一人前が5皿の「割り子そば」として提供されるのが一般的です。この形式になったのは幕末の頃で、屋台で提供する際に、持ち運びやすい手塩皿に蕎麦を盛り付けたのが始まりとされています。昭和30年代に「出石皿そば」として現在の形が定着しました。

各店舗では、通常、一人前として5皿の蕎麦が提供されます。1皿に盛られる蕎麦の量は2～3口程度と少なく、追加注文が可能な店が多いのも特徴です。蕎麦は実を丸ごと挽いたもので、茶褐色をしています。出汁は徳利に入って提供され、薬味には刻みネギ、おろし大根、おろしワサビ、とろろ、生卵などが添えられます。ワサビは、客が自分で摺り下ろすスタイルで提供されることもあります。

蕎麦の食べ方は、蕎麦猪口に好みの量の出汁と薬味を入れ、蕎麦を浸して食します。以前は、出雲そばのように皿に直接出汁と薬味をかけて食べていたようです。出石そばは「挽きたて」「打ちたて」「茹がきたて」の“三たて”を重視しているのが特徴です。

蕎麦を盛る小皿は、出石焼の各店舗オリジナルの絵付けがされており、お店ごとに異なる絵柄を楽しむのも、出石そばの楽しみ方の一つです。

出石の蕎麦文化

但馬の小京都とも呼ばれる出石の街には、50軒もの蕎麦屋が軒を連ねています。毎年4月第3日曜日には、出石城でわんこそば形式の大食い大会「出石名物そば喰い大会」が開催され、地元の人々や観光客で賑わいます。

お店では一人前が5皿ですが、地元では食べ終わった皿を積み重ね、箸の高さになると成人男性の一人前とされる風習があります。また、決められた量のそばを食べると、そば通の証として記念品がもらえるお店もあります。

地域ブランドとしての取り組み

2008年には、出石皿そば協同組合が設立され、地域ブランド化を推進しています。行政と連携し、地元産の蕎麦の地産地消を進める取り組みも行われています。特に「コウノトリ育むお米」をブランド化した蕎麦は、認定された生産組織と連絡を取り、JAたじまへ出荷された豊岡市産の玄ソバを出石皿そば協同組合を通じて出石地区の蕎麦店に供給されています。この事業には、中谷農事組合法人、殿そば生産組合、府市場・池上営農組合、堀営農組合、観音寺営農組合、出石そば生産組合の6団体が参加しています。

出石そばは、2018年1月12日に商標登録されています。（商標登録第6010420号）

出石を訪れた際には、ぜひ出石そばをご賞味ください。各店舗こだわりの蕎麦と、出石焼の美しい器の数々をご堪能ください。

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