切望

『切望』（The Craving）は、1918年に公開されたアメリカ合衆国のサイレントドラマ映画です。監督と脚本は、兄弟であるフランシス・フォードとジョン・フォードが共同で担当しました。この映画の35mmプリントは、オランダのアイ・フィルムミュージアムに貴重なアーカイブとして保存されています。

あらすじ

物語は、化学者のウェイルズが新型爆薬を開発したことから始まります。彼のライバルである化学者カサリブは、その爆薬の化学式を手に入れようと画策します。カサリブは、ウェイルズが過去にアルコール依存症であったことを知り、彼の被後見人である美しい女性グレイを利用して、ウェイルズに再び酒を飲ませようとします。策略は見事に成功し、ウェイルズは深酒の末にカサリブに化学式を譲り渡してしまいます。

再びアルコールに溺れるようになったウェイルズですが、彼は分裂した人格を通して、爆弾が使用される戦場の悲惨な光景を目の当たりにし、ついに目を覚まします。彼はカサリブの研究室に乗り込み、揉み合いとなりますが、その最中に爆薬が爆発し、カサリブは命を落とします。事件後、ウェイルズは自らの過ちを悔い、グレイと結ばれるという結末を迎えます。

見どころ

この映画の見どころの一つは、カクテルグラスで踊る小美人など、アルコールがもたらす幻覚シーンの描写です。これらのシーンは、アルコール依存症患者が見る悪夢のような世界を視覚的に表現しており、観客に強烈な印象を与えます。

キャスト

キャロル・ウェイルズ：フランシス・フォード
ビューラ・グレイ：メイ・ガストン
アラ・カサリブ：ピーター・ジェラルド
ディック・ウェイルズ：デューク・ウォーン
* ディックの妻：ジーン・ハサウェイ

『切望』は、単なるドラマ映画としてだけでなく、アルコール依存症の恐ろしさや、そこからの再生を描いた作品としても評価されています。また、幻覚シーンの斬新な表現は、後の映画作品にも影響を与えたと言われています。サイレント映画ならではの表現方法と、フランシス・フォード兄弟の演出手腕が光る作品です。

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