初めての街で

「初めての街で」（はじめてのまちで）は、日本の歌手、西田佐知子によって1979年11月に発表されたシングルレコードです。この盤はポリドール・レコードから、品番DR-6363としてリリースされました。

本楽曲は、古くから菊正宗酒造のテレビコマーシャルソングとして広く親しまれています。その歴史は1975年に遡ります。作曲家の中村八大が、このCMのためにロック、ポルカ、スローという異なるスタイルの候補曲を3曲制作。その中から、菊正宗酒造の社員による人気投票によってロック調のメロディーが選ばれました。

CMソングの歌唱歌手はオーディションを経て決定されたとされていますが、選考過程の詳細は明らかではありません。当初の候補リストに西田佐知子の名前は含まれていなかったとされ、最終的に彼女が起用された具体的な理由についても不明な点が多いです。なお、選考段階で制作されたデモテープでは、歌手の三条アンナが歌唱を担当していました。CM用の公式音源は1975年8月26日に録音され、翌9月からテレビでのオンエアが始まりました。

興味深い点として、CMで実際に使用された音源と、1979年に発売されたシングルレコードに収録された音源は異なるバージョンです。歌詞にも一部違いが見られ、シングルの最終フレーズ「やっぱり俺は一人じゃない」の部分が、CMでは商品名に置き換えられ「やっぱり俺は菊正宗」として放送されていました。このコマーシャル・バージョンは、1975年にプロモーション用の非売品シングル「やっぱり俺は菊正宗」として一部関係者に配布されたほか、西田佐知子のキャリアを総括した2009年のベストアルバム『初めての街で 〜西田佐知子ベストセレクション〜』にも「トラディッショナル・バージョン」として収録され、再び多くのリスナーの耳に届くこととなりました。

時が流れ、1990年には広告代理店から、当時の西田佐知子が芸能活動から遠ざかっていたことを受け、別の歌手によるカバーバージョンを制作する案が提案されたことがあります。しかし、この時点では見送られました。

長らくCMの放映頻度が減少していましたが、2007年には菊正宗のボトルラベルが40年ぶりにデザイン変更されたことなどを契機に、再びテレビコマーシャルが積極的に放送されるようになりました。この際にも、引き続き西田佐知子によるコマーシャル・バージョンが使用されました。以前のCMでは歌手名が表示されることはほとんどありませんでしたが、2007年以降のCMでは「歌 西田佐知子」というテロップが画面に表示されるようになりました。さらに、2009年秋からは演歌歌手のジェロが本楽曲をカバーし、ジェロ歌唱による新バージョンがCMに起用され、「ジェロ キクマサを歌う。」とテロップが表示されるようになりました。

2009年、菊正宗の創業350年を記念して、西田佐知子とジェロ、それぞれのコマーシャル・バージョンを収録した非売品のカップリングCD『菊正宗創業350年記念プレミアム・カップリングCD』が制作されました。このCDは、菊正宗が行ったキャンペーンの懸賞品としてプレゼントされました。

なお、本シングルのB面には、作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童という、当時数々のヒット曲を手がけていた夫妻による楽曲「ラストコール」が収録されています。編曲は馬飼野俊一が担当しました。

「初めての街で」は、西田佐知子の代表曲の一つとして、その後も複数のベストアルバムや全曲集に繰り返し収録されています。主な収録作品としては、以下が挙げられます。

西田佐知子 アカシアの雨がやむとき（1993年）
全曲集（1994年）
西田佐知子全曲集（1999年）
スーパー・バリュー 西田佐知子（2001年）
西田佐知子 魅惑のヒット集ベリーベスト（2006年）
西田佐知子歌謡大全集（2007年）
* 初めての街で 〜西田佐知子ベストセレクション〜（2009年）

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