初恋 (村下孝蔵の曲)

初恋（はつこい）

村下孝蔵の楽曲「初恋」は、1983年2月25日にCBSソニーからシングルとしてリリースされました。この曲は、村下がデビューして4年目にあたる5枚目のシングルであり、同年発売されたアルバム『初恋〜浅き夢みし〜』にも収録されています。「初恋」はライブやコンサートにおいて、常に締めの曲として演奏され、村下がテレビに出演する際も晩年までこの曲が披露され続けました。

1999年7月3日に行われた村下の「お別れの会」では、参加者たちが「初恋」のコーラスを歌い、彼の冥福を祈りました。この歌唱は後に録音され、アルバム『同窓會』の1曲目として収録されることになります。また、村下の故郷である熊本県水俣市には、2013年にこの曲の歌碑が建設され、商店街は「初恋通り」と改名されました。

制作背景

「初恋」の具体的な制作経緯は村下自身から詳しく語られていませんが、プロデューサーの須藤晃によると、当時ソニーでデビューが決まったアイドル歌手三田寛子をイメージして、歌詞を放課後の情景に合わせて書き直すことになったという証言があります。三田は村下の楽曲をカバーしたこともあり、彼女の影響も一因だったと言われています。

歌詞には「放課後の校庭を走る君を探し続けている僕」という情景が描かれ、これは多くの人に共感を呼びました。村下はソングライターとして、先に作曲を行い、その後歌詞を須藤と共に練りあげる手法をとったということです。須藤は「昭和歌謡にしたい」として、自身の少年時代の思い出を参考にしながら、曲の世界観を形成していきました。初期の歌詞には「君が笑う、走る姿、今でも焼き付いて」とあり、具体的なイメージに発展していったのです。

音楽的なアプローチ

編曲を担当した水谷公生は「初恋」の初期バージョンがバラード調であったことを指摘し、ポップなアレンジへの変更を提案しました。それにより、楽曲はより軽快なテンポに生まれ変わり、聴き手に春のような爽やかな感覚を与えることができました。

特に、水谷は1980年にヒットしたシーナ・イーストンの「モダン・ガール」を意識しつつ、新しい形への挑戦をしたと言います。結果として、この楽曲は青春の走馬灯のような疾走感を表現することに成功しました。「校庭」というフレーズは、村下が広島で過ごした苦難の時期に、娘と遊んだ広島市立梅林小学校の風景からインスパイアされたとも言われています。

人気の確立

「初恋」はオリコン調べによれば、52.6万枚以上を売り上げ、村下にとって最大のヒット曲となりました。TBS系の音楽番組『ザ・ベストテン』では1983年にランクインし、最終的には年間ランキングで6位を獲得しています。村下はこの曲について感謝のメッセージを録音し、放送されるという感動的な瞬間もありました。

このように「初恋」は、ただのシングルにとどまらず、村下自身の音楽キャリアにおいて特別な存在となり、数多くのアーティストによってカバーされ続けています。

村下孝蔵の「初恋」は、今でも多くの人にとって特別な心の故郷として愛されているのです。

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