判検交流

判検交流とは

判検交流とは、日本の裁判所と検察庁の間で行われる人事交流制度です。具体的には、裁判官が検察官の職務を一定期間経験したり、逆に検察官が裁判官の職務を経験したりします。この制度は、第二次世界大戦終結直後に、司法省に民事の専門家が不足していたことを背景に始まりました。当初は、裁判所と法務省の間で少人数での交流が行われていましたが、1970年代以降、交流の規模が拡大しました。

制度の変遷

1974年には、法務省の役職の約25％を裁判所からの出向者が占めるようになり、1988年にはその割合が40％にまで増加しました。1999年には、交流者の合計が100名を超えるようになり、その傾向はさらに強まりました。裁判官は主に法務省の民事局や訟務部門に出向することが多いですが、検察官になる例や、逆に検察官が裁判官になる例も存在します。

制度の目的と効果

判検交流の主な目的は、法律家としての視野を広げることです。異なる立場の職務を経験することで、多角的な視点や理解を深め、より質の高い司法サービスの提供に繋げることが期待されています。

制度の問題点

判検交流には、いくつかの問題点が指摘されています。最も大きな問題点は、裁判の公平性を損なう可能性があることです。

公平性への懸念：特に、法務省の訟務局長には慣例的に裁判官が出向し、国の代理人として裁判に関わります。その後、裁判官として裁判所に戻り、以前に国の代理人として関わった事件と類似する訴訟を担当した場合、裁判の公平性が損なわれるのではないかという懸念が強くあります。

刑事事件における問題：旧憲法下では、予審制において裁判官が起訴を決定していたため、判検交流は一定の合理性を持っていました。しかし、現行法では、裁判官が刑事事件の起訴に関与することは原則として認められていません。それにもかかわらず、判検交流によって裁判官が検察官として起訴に関わることは、制度の公平性を疑う根拠になると指摘されていました。

批判の高まり：日本弁護士連合会は、判検交流が裁判の公平性を損なうとして、この制度の禁止を求めています。2022年には、東京地裁の裁判長が法務省の訟務局長に就任したことで、批判がさらに高まりました。国会でも、判検交流の問題点が取り上げられ、法務大臣に対する質疑が行われています。

制度の対応と現状

これらの問題点に対応するため、法務省は検察官を弁護士事務所に派遣したり、企業で研修させたりする制度を導入し、弁護士や大学教授などを調査員として登用するなどの対応を行っています。また、刑事事件における判検交流は、2012年度に廃止されました。しかし、民事事件における判検交流は、規模を縮小しつつも依然として存続する方針です。

関連項目

法務省
最高[[裁判所事務総局]]
司法省 (日本)
法曹一元制

脚注

判検交流は、司法制度における重要なテーマの一つであり、その是非については、今後も議論が続けられると考えられます。

出典

野村二郎『最高裁判所―司法中枢の内側』講談社現代新書、1987年。
塩谷國昭「裁判官の処遇についての再論」『法社会学 1991 巻 (1991) 43 号』、日本法社会学会、1991年。
読売新聞社会部『ドキュメント検察官…揺れ動く「正義」』中公新書、2006年。
萩屋昌志『日本の裁判所』晃洋書房、2004年。
西川伸一『裁判官幹部人事の研究―「経歴的資源」を手がかりとして （増補改訂版）』五月書房、2020年。

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