別府ラクテンチケーブル線

別府ラクテンチケーブル線：遊園地と一体となった山岳ケーブルカーの軌跡

別府ラクテンチケーブル線は、大分県別府市にある遊園地『ラクテンチ』へと続く、全長約253.5mの短いながらも歴史深いケーブルカー路線です。標高差のある立石山の中腹に位置するラクテンチへのアクセス手段として、遊園地と一体となって運営されています。単線2両交走式、軌間1067mmという仕様で、最急勾配は558‰に達します。

開業から現在までの歴史：幾多の困難を乗り越えて

1929年（昭和4年）に『別府遊園地索道』として開業して以来、ラクテンチケーブル線は地域住民の生活路線としての役割と、遊園地へのアクセス手段としての役割を担ってきました。その歴史は、幾多の困難と再生の歴史でもあります。

開業当初は木村久太郎氏によって経営されていましたが、その後、別府国際観光、岡本製作所と運営会社が変わり、2008年には一時休園の危機に瀕しました。しかし、地域住民の強い要望もあり、岡本製作所が再出発。2009年にはリニューアルオープンを果たし、愛称が一般公募で決定された「ドリーム号」「メモリー号」という愛らしいデザインの車両が運行を開始しました。その後、2018年には西石油グループへと事業譲渡され、現在に至ります。

車両：レトロな魅力と愛称の変遷

現在の車両は、1974年製車体に2000年製の日本で最古級の台車を組み合わせたものです。2009年のリニューアルでは、前面にイヌとネコを模したFRP装飾が施され、「ドリーム号」「メモリー号」という愛称が付けられました。その後、2019年には新たなデザインへと変更され、現在も運行を続けています。それぞれの車両には、地域住民や観光客から親しまれる愛称が付けられており、歴史を感じさせる要素となっています。

運行形態と料金体系：遊園地との一体運営

ケーブルカーの運行は、原則として20分間隔で行われ、所要時間は約3分です。多客時には臨時便も運行されます。休園日には運休となります。

料金体系は、遊園地への入園料と一体となっています。ラクテンチのメインゲートから入場する場合は、入園料にケーブルカーの往復料金が含まれますが、上部の乙原ゲートから入場する場合は、ケーブルカー料金は別途必要になります。また、乙原地区の住民は運賃のみで乗車できるなど、地域住民の足としての役割も担っています。

駅と接続交通：アクセスと周辺環境

ケーブルカーには、雲泉寺駅（ラクテンチ下駅）と乙原駅（ラクテンチ上駅）の2駅があります。ただし、駅名標は設置されておらず、案内上は「ラクテンチ下駅」「ラクテンチ上駅」と呼ばれています。雲泉寺駅からは、JR日豊本線別府駅からバスやタクシーでアクセス可能です。

まとめ：地域に根付く、歴史と魅力あふれるケーブルカー

別府ラクテンチケーブル線は、単なる遊園地へのアクセス手段としてだけでなく、地域住民の生活に密着し、歴史を刻んできた貴重な存在です。レトロな車両、山頂からの景色、そして遊園地との一体感など、多くの魅力を備えたこのケーブルカーは、別府観光において欠かせない要素となっています。その歴史と魅力を肌で感じながら、ラクテンチへの旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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