別所砂留

別所砂留（べっしょすなどめ）の概要

別所砂留は、広島県福山市芦田町福田に位置する砂防堰堤の群集です。この堰堤群は、江戸時代中期から後期にかけて備後福山藩によって建設されました。現在でも当時の形状で保存されており、36基の砂留のうち14基は特に大規模なものとされています。2015年には土木学会の選奨土木遺産に選定され、地域の土木遺産としての価値が認められています。

背景と歴史

「別所」という名称は、荘園とは異なる新たに設けられた集落や農地を指し、五入道川の支流として福田の地域が流れています。この川は、農地を守るために砂留が設置された川流域にあたります。江戸時代以降、福山藩は土砂災害から農地を守るために多くの砂留を構築しましたが、別所砂留はその中でも特異なケースです。なぜなら、周辺の地質が粘板岩主体であるのに対し、他の地域では異なる地質が用いられていたからです。

普請の始まり

別所砂留が設置された背景には、江戸中期の干害や冷害が関与しているとされています。具体的には享保7年（1722年）の古文書から、工事に関する記録が残っており、当時から改良が行なわれていたことがうかがい知れます。1722年時点で、すでに砂留の工事が進められていたことが確認されており、その後の文献でも砂留が高まく評価を得ていく様子が窺われます。

保全活動の進展

2009年に地元住民による調査が嚆矢となり、「別所砂留を守る会」が設立され、保全活動が始まりました。活動には地域住民だけでなく、広島県外からもボランティアが参加しています。2015年には初めて土木学会選奨土木遺産に指定され、地域の認知度はさらに高まりました。これにより、別所砂留は地域振興の象徴としても位置づけられています。

構造と特異性

現在確認されている別所砂留は36基で、特に1番から14番の堰堤が規模が大きく、当時の構造が良好な状態で残っています。これらの砂留には、石材として溶結凝灰岩が使用されており、堰堤の構造も多様で、複合的な形態が見られます。具体的には、土堰堤形式や石壁形式の堰堤が組み合わさっており、自然環境に適した設計となっています。

設計の工夫と景観

堰堤自体には流通部があり、急勾配の場所では石壁が補強されています。特に、10番砂留は江戸時代の堰堤の中でも最大規模であり、見学者にも人気のスポットとなっています。その上部は緩やかなアーチ状を形成していて、周囲の自然景観と調和しています。他の砂留もそれぞれ特徴があり、4番砂留はかつて水田として利用されていた場所で、現在は桜の名所として知られています。

アクセスと周辺

福山市中心部からのアクセスも良好で、専用の駐車場や案内看板が整備されています。登山道が整備されているため、軽装で訪れることができ、特に1番から14番までの砂留を散策するのはおすすめです。ただし、15番以降の砂留は未整備であり、注意が必要です。また、他の歴史的な遺構へもつながる尾根道があり、春には美しいタムシバの花を見ることができます。地域の活性化を図る活動が行われ続けている別所砂留は、単なる土木遺産に留まらず、地域文化の一部としても重要な存在です。

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