利雪

利雪（りせつ）とは

利雪とは、豪雪地帯において、降雪を単に生活の妨げとなるものとして捉えるのではなく、その特性を積極的に活用しようとする考え方です。具体的には、農産物の貯蔵、建物の冷房、観光資源としての活用など、多岐にわたる分野での応用が模索されています。この概念は、物理学者の中谷宇吉郎氏らによって提唱され、雪国における新たな価値創造の可能性を示唆しました。

農産物の貯蔵

雪を利用した農産物の貯蔵は、古くから行われてきた伝統的な技術です。雪室と呼ばれる貯蔵庫に雪を敷き詰め、その冷気を利用して玄米や長芋などの農産物を新鮮な状態で長期保存することができます。自然の冷気を利用するため、環境負荷が少なく、また、一定の低温環境が保たれるため、品質劣化を防ぎ、より良い状態で消費者に届けることが可能です。

建物での利用

雪冷房システムは、雪の冷熱エネルギーを利用して建物を冷却するシステムです。具体的には、雪を貯蔵した雪室の冷気を循環させたり、融雪時に発生する冷水を利用したりします。このシステムは、夏季の冷房エネルギー消費を大幅に削減することができ、省エネルギー化に貢献します。

近年では、経済産業省がグリーン熱証書の導入を検討しており、雪冷房による環境価値を証券化する動きも出てきています。これにより、雪冷房システムの導入を促進し、さらなる普及が期待されています。秋田県立横手清陵学院中学校・高等学校では、実際に雪冷房システムが導入されており、その有効性が実証されています。

観光、地域おこし

雪は、観光資源としても大きな可能性を秘めています。雪まつりのような雪像イベントは、国内外から多くの観光客を集めることができます。札幌雪まつりは、その代表的な例と言えるでしょう。

また、豪雪地帯ならではの体験型観光も人気を集めています。例えば、青森県五所川原市金木町地区では、吹雪を逆手に取った「豪雪体験ツアー」が実施されており、普段体験できない雪国の厳しさと美しさを同時に感じることができます。これらの取り組みは、地域経済の活性化に大きく貢献しています。

まとめ

利雪は、雪国の持続可能な社会の実現に不可欠な概念です。雪を単なる厄介者としてではなく、貴重な資源として捉え、その恵みを最大限に活用することで、環境負荷の低減、地域経済の活性化、そして新たな文化の創造に繋がります。今後ますます、利雪の取り組みが広がっていくことが期待されます。

参考文献

* 中谷宇吉郎「中谷宇吉郎随筆集」岩波書店

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