制御弁式鉛蓄電池

制御弁式鉛蓄電池（VRLA電池）の概要

制御弁式鉛蓄電池（VRLA電池）は、鉛蓄電池の一種で、完全密閉型鉛蓄電池（SLA電池）とも呼ばれます。従来の鉛蓄電池と異なり、電解液がセパレータに吸収（AGM型）またはゲル化（ゲル型）されており、液漏れの心配がなく、メンテナンスが容易です。

VRLA電池は、電解液の蒸発を防ぎ、内部で発生したガスを再結合させることで、液補充の必要性をなくしています。しかし、「メンテナンスフリー」とは、全くメンテナンス不要という意味ではなく、定期的な点検や機能検査は必要です。

VRLA電池の種類

VRLA電池には主に以下の2種類があります。

AGM型: 電解液をガラス繊維マットに吸収させたタイプ。軽量で、振動や衝撃に強いのが特徴です。
ゲル型: 電解液にシリカゲルなどを添加してゲル状にしたタイプ。自己放電率が低く、長寿命です。

それぞれのタイプには、長所と短所があり、用途によって最適なタイプを選択する必要があります。

VRLA電池の歴史

VRLA電池の開発は、1930年代初頭にゲル電池の開発から始まりました。1950年代後半には現代的なゲル電池が登場し、1970年代初頭にはAGM電池が開発されました。その後、技術革新が重ねられ、現在では様々な用途で利用されています。特に1980年代には、高容量・長寿命のAGM電池が開発され、航空機や軍事用途などにも採用されるようになりました。

VRLA電池の基本原理

VRLA電池の基本原理は、従来の鉛蓄電池と同じく、鉛と二酸化鉛の電極と希硫酸電解液の化学反応を利用しています。放電時には、鉛と二酸化鉛が硫酸鉛と水になり、充電時にはその逆反応が起こります。

VRLA電池の特徴は、電解液が固定されているため、充電時の水の電気分解で発生した酸素が、負極で還元され、再び水に戻る反応が促進される点です。このため、水の損失が少なく、内部圧力の上昇も抑制されます。しかし、過剰な圧力上昇を防ぐため、安全弁が備えられています。

VRLA電池の構造

VRLA電池は、個々のセルに圧力解放弁を備えており、完全密閉型ではありませんが、メンテナンスフリーを目的として設計されています。また、従来の鉛蓄電池と異なり、どんな向きにも設置できるのが特徴です。

AGM電池の構造

AGM電池では、電解液をガラス繊維マットに保持することで、液漏れの防止と、電極間の絶縁性を確保しています。ガラス繊維マットは、高い表面積を持つことで、十分な量の電解液を保持できます。

ゲル電池の構造

ゲル電池では、電解液にシリカゲルなどのゲル化剤を添加することで、電解液をゲル状にします。これにより、電解液の流動が抑えられ、液漏れの心配が少なく、振動や衝撃にも強くなります。

VRLA電池の応用

VRLA電池は、その高い信頼性とメンテナンス性の良さから、様々な用途で使用されています。

自動車: オートバイ、ATV、高級車、ハイブリッド車など
産業機器: 無停電電源装置（UPS）、電動車椅子、遠隔センサーなど
航空機: 航空機、軍用機など
船舶: マリンレジャーボートなど
* その他: 太陽光発電システム、風力発電システムなど

特に、振動や衝撃が多い環境や、メンテナンスが困難な環境では、VRLA電池が最適な選択肢となります。また、安全性が高いこともVRLA電池の大きなメリットです。

参考文献

記載されている参考文献は省略します。

もう一度検索