前橋市立桃井小学校

前橋市立桃井小学校（まえばししりつもものいしょうがっこう）は、群馬県前橋市表町一丁目にある公立小学校です。明治時代初期に誕生した、県内でも指折りの歴史を持つ伝統校として知られています。

群馬近代教育の礎となった学舎

本校の歴史は、明治5年（1872年）11月22日に、当時の前橋藩庁舎跡地を利用して開校した「第一番小学厩橋学校」に始まります。これは、群馬県において最初に設立された小学校の一つであり、本県における近代初等教育の礎を築きました。

明治6年には別に「十八郷学校」が開設され、同年11月には「桃井小学校」と改称されました。明治7年には桃井小学校の新校舎が完成するなど、当初は厩橋学校と桃井学校が並立していました。その後、両校は統合と分離、校名変更を幾度か繰り返す複雑な変遷をたどります。明治17年に厩橋小学校は「東群馬第一小学校」となり、明治19年にはこれが「桃井尋常小学校」と改称され、高等科も併設されます。明治23年には両校が合併して「厩橋尋常小学校」となりますが、明治26年には再び「桃井尋常小学校」に改称。明治41年には厩橋西高等学校との合併で「桃井尋常高等小学校」となりますが、大正2年（1913年）には再び「桃井尋常小学校」となるなど、その沿革は極めて複雑です。

教育面においても先進的な取り組みが見られ、大正10年（1921年）には群馬県内で初めて林間学校を実施しました。太平洋戦争中の昭和16年（1941年）には国民学校令により「桃井国民学校」と改称されましたが、戦後の学制改革を経て、昭和22年（1947年）に現在の校名である「前橋市立桃井小学校」となりました。昭和28年（1953年）には、今も歌い継がれる校歌『赤城は晴れて』が制定されています。

本校は特別支援教育の分野でも先駆的な役割を果たしており、昭和41年（1966年）には県内初の言語指導教室、昭和46年（1971年）には同じく県内初の情緒指導教室を設置しました。これらの通級指導教室は、現在も前橋市全域の児童を対象としています。

近年、平成28年（2016年）には前橋市立中央小学校との統合が実施され、旧中央小学校の敷地への移転・新校舎建設が進められました。そして、平成30年（2018年）に新校舎が完成したことにより、現在の所在地へと移転しました。令和4年（2022年）には開校150周年を迎え、その長い歴史と伝統を継承しつつ、新たな時代への歩みを進めています。

教育目標と方針

本校の教育目標は、出身者である元内閣総理大臣、鈴木貫太郎氏の遺訓「正直に　腹を立てずに　撓まず励め（たゆまず、と読み慣わされています）」を基本としています。これを踏まえ、以下のような具体的目標を掲げ、児童の育成に努めています。

明るく、思いやりのある子
よく考え、進んで学ぶ子
たくましく、ねばり強い子

また、教育方針として、

共に生き、思いやる心を育成する。
基礎的な知識・技能と考える力を育成する。
強い意志の育成と体力の向上を図る。
特別支援教育の充実を図る。
桃井小のよき校風を引き継ぎ、開かれた学校経営を推進する。

を柱としています。

学区と周辺環境

現在の学区は、設立当初から変遷し、前橋市の中心部を含む16町で構成されています。近年統合された旧中央小学校の学区も含まれており、具体的には以下の地域が該当します。

大手町一丁目、二丁目、三丁目
千代田町一丁目、二丁目、三丁目、四丁目、五丁目
本町一丁目、二丁目
紅雲町一丁目、二丁目
南町一丁目、三丁目
表町一丁目、二丁目

学校周辺は、群馬県庁や前橋市役所といった行政機関をはじめ、前橋市立図書館、JR前橋駅、前橋市民文化会館（昌賢学園ホール）など、前橋市の中心的な施設が集まる利便性の高い環境です。

主な出身者

本校またはその前身校からは、多くの著名人が輩出されています。特に、前述の鈴木貫太郎氏（厩橋学校時代）は、第二次世界大戦終結時の内閣総理大臣として日本の歴史において重要な役割を果たしました。その他にも、政治家の宮崎岳志氏や、コピーライター、エッセイストとして知られる糸井重里氏などが本校の卒業生です。

前橋市立桃井小学校