前衛 (ミサイル)

「前衛（ぜんえい、中国語: 前卫、拼音: QiánWèi）」とは、中華人民共和国によって開発および製造が進められている、一連の携帯式地対空ミサイルシステム（MANPADS）のシリーズ名です。

概要

この兵器システムは、地上の歩兵や部隊が容易に携行・運用できるよう設計された軽量かつ機動性の高い対空ミサイルであり、主として低空を飛行する航空機やヘリコプターなどに対処することを目的としています。中国国内では「前卫」という名称が用いられ、「QW」という略称が広く使われています。一方、国際的な軍事市場においては、「ヴァンガード（Vanguard）」という輸出名で多くの国々に提供されています。

開発と背景

携帯式地対空ミサイルは、現代戦において地上部隊の生存性向上や重要施設の防衛に不可欠な装備として位置づけられています。中国もこの分野の開発に力を入れており、前衛シリーズは、それ以前に開発された紅纓（HungYing）ミサイルシステムと並行して、またはその後継として発展してきました。紅纓が中国における初期のMANPADS開発を代表する存在であるとすれば、前衛シリーズはより新しい技術を取り入れ、性能向上を図ったモデルとして位置づけられます。これらのシステムの開発を通じて、中国は自国の防空能力を強化するとともに、国際市場における兵器供給国としての地位を確立しようとしています。

主な型式

前衛シリーズは、技術の進歩に応じて複数の型式が開発され、能力が向上しています。確認されている主な型式は以下の通りです。

QW-1（Vanguard 1）: シリーズの初期モデルとされています。基本的なMANPADSの機能を有し、赤外線誘導方式などが採用されていると考えられます。
QW-2（Vanguard 2）: QW-1の改良型とみられ、誘導性能や射程などが向上している可能性があります。
QW-3: QW-1およびQW-2からさらに発展した型式であり、より先進的な誘導技術や抗妨害能力を備えていると考えられています。
QW-4: シリーズの最新型の一つであり、さらに高い性能や新たな機能が付加されていることが期待されます。

これらの型式は世代を経るごとに、目標の探知・追尾能力、ミサイルの速度や運動性、そして敵の電子妨害（ECM）への耐性などが強化されていると推測されます。

運用と輸出

MANPADSの最大の利点はその運用における柔軟性です。歩兵が単独で携行・発射できるため、様々な地形や状況下での迅速な展開が可能であり、大規模なレーダー網やミサイルシステムでは対応しきれない低高度からの脅威に対して有効な防御を提供します。前衛シリーズも、中国人民解放軍の陸軍部隊を中心に広く配備されており、野戦における部隊防空や、重要施設・地点のポイント防衛などに使用されています。また、「ヴァンガード」の名称で中東、アジア、アフリカ、南米などの多くの国々に輸出されており、国際的なMANPADS市場において無視できない存在感を示しています。輸出は、中国精密機械進出口総公司（CPMIEC）などの貿易会社を通じて行われています。

今後の展望

MANPADS技術は現在も進化を続けており、より高精度なセンサー、マルチスペクトル誘導、ネットワーク化による交戦情報共有など、新たな技術が導入されています。前衛シリーズも、今後さらに高度な誘導システムや改良されたミサイルを組み込んだ新型モデルが登場する可能性があり、中国の防空能力および兵器輸出能力の向上に貢献していくと見られます。

もう一度検索