前野景定

前野景定（まえの かげさだ）

前野景定は、安土桃山時代の武将で、豊臣氏の家臣として知られています。もとの名は坪内景定といいました。豊臣秀次の近習家老として仕え、その忠義を尽くしました。官位は出雲守です。

生涯

前野景定は、羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）の重臣であった前野長康の子として生まれました。当初は父の別名である坪内光景から「景」の字、そして坪内氏の通字である「定」の字を取り、坪内景定と名乗りました。その後、父である長康の「長」の字を賜り、前野長重と改名します。

文禄の役の際には、父とは異なり在京していました。父と共に豊臣秀次の家老として秀次を支えましたが、文禄4年（1595年）に起こった秀次事件において、秀次を弁護したことが原因で、豊臣秀吉から秀次与党として謀反の疑いをかけられ、父と共に捕らえられ、中村一氏に預けられることになります。

その後、秀吉の命令により切腹を命じられ、駿河府中にて自害したと伝えられています。父の長康もその3日後に伏見六漢寺で切腹しており、父子ともに悲劇的な最期を遂げました。

景定の妻である御長（おちょう、於蝶）にも捕縛命令が出されました。彼女は細川忠興の長女であったため、細川家は混乱し、重臣の松井康之らが奔走しました。その結果、景定と離縁し出家させることで、ようやく捕縛を免れることができたとされています。

『武功夜話』によると、景定には男子と女子がそれぞれ1人ずついたとされています。もし、この2人の子供の母親が御長であった場合、この子供たちは明智光秀の曾孫にあたることになります。しかし、この2人の子供たちのその後の消息は明らかになっていません。

前野景定を演じた人物

瀬川亮：大河ドラマ『功名が辻』（2006年、NHK）

参考文献

吉田蒼生雄『武功夜話』新人物往来社、1987年

前野景定は、主君への忠義を貫いたものの、時代の波に翻弄された悲劇の武将として、歴史に名を残しています。彼の生涯は、戦国時代から安土桃山時代への激動期を象徴する出来事の一つとして語り継がれています。

もう一度検索