割 (寄席)

東京の寄席における「割」制度について

東京の寄席では、「割」という独特な給与制度が存在し、これは一日ごとの観客数と演者の地位に基づいて決まり、各演者が受け取る金額は当日までわからないという特性があります。単純に興行収入を均等に分けるのではなく、「演者ごとの客一人当たりの給金」に「入場した有料のお客様の人数」を掛けた計算で算出されます。そのため、演者にとっては日々の客の入りが何よりも大切です。

この「割」の制度は東京に特有のもので、関西では長らく固定給システムが採用されています。具体的には、関西では事前に合意した金額が支払われるため、稼ぐ金額が不透明ではなく、演者にとって計画が立てやすいのが特徴です。

過去には、寄席が集めた入場料から一定の手数料を引いた後、残る金額を主任と呼ばれる演者に手渡し、彼が次の日の出演者に金銭を分配する仕組みが一般的でした。興行最終日の分は、次回の興行参加者に渡すか、関係者に預ける形を取っていました。

「割」を準備するには、現金を手作業で計算し、袋に詰める必要があります。このプロセスは「割を作る」と呼ばれ、手間のかかる作業です。また、格下の落語家が主任を務めると、ランク上の演者の給金を自分持ちで増額することがしばしばあり、その結果、主人公が収入を減らしてしまうこともありました。

しかし、今では「割」の作成は専任の事務員が行い、主任はその作業から完全に離れています。現金も二日ごとに手渡されるスタイルが取られており、振込の制度は存在しません。この事情もあって、近年の寄席では格上の演者への割増は行われなくなっています。

さらに、娯楽の多様化、寄席の数が減少していること、寄席側の取り分が増加していることから、現在の定席の「割」は非常に僅かな金額になっています。それに従い、現代の落語家たちの主な収入源はお座敷や独演会などに移行しています。特にお座敷から得られる収入は、テレビ出演の有無にかかわらず、数万から場合によっては100万円に達することもあります。

お座敷は一般にメディアで取り上げられることが少ないですが、落語家の生活には大きな影響を与えており、頻繁にお座敷を回ることによって、実際にはテレビ出演が少なくても収入が高い落語家も存在します。興行において観客が少ない場合、手元に残る金額はわずかであり、「労多くして益が少ない」という表現がぴったりの状況です。

ただし、一回の出演ごとに最低額の保障が設定されており、観客が少ない興行での損失は寄席や協会が負担しています。国立演芸場では、設立当初は完全な「割」制度であったが、後にシステムが見直され、一定の出演料が支払われる方式に変更されました。このように、昔とは異なる形で落語家たちの収入が保証されています。従って、今日の落語家は、興行の結果に左右されず、安定した収入を得ることができる環境が整っているのです。

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