割れしのぶ

割れしのぶ（われしのぶ）

京都で伝統文化の担い手として活動する女性芸能者、舞妓。
彼女たちがそのキャリアの初期段階、具体的には店出しからおよそ1年から2年という比較的短い期間に結う特別な髪型が「割れしのぶ」です。この髪型は、その時期の舞妓が持つ初々しさと相まって、見る者に非常に華やかで可愛らしい印象を与えます。

割れしのぶは、単に髪を整えるだけでなく、その飾り方に大きな特徴があります。様々な種類、形の髪飾りが豊富に用いられることで、髪型全体に豪華さと彩りが加わります。

特徴的な髪飾りについて

この髪型を彩る主要な髪飾りには、以下のようなものがあります。

ありまち鹿の子（ありまちかのこ）: 髪の一部を覆うようにして用いる布製の飾りです。伝統的な鹿の子絞りのような文様が施されていることからこの名で呼ばれることがあり、髪型に柔らかな質感と古典的な美しさをもたらします。
鹿の子留め（かのこどめ）: ありまち鹿の子を所定の位置に固定するために使われる留め具です。機能性だけでなく、装飾としての役割も担っています。
花簪（はなかんざし）: 割れしのぶの最も目を引く要素の一つです。季節感を表現するために、その月の代表的な花をかたどった、大ぶりで色鮮やかな簪が多用されます。例えば、1月には松や梅、4月には桜といったように、毎月異なった花が選ばれます。これらの花簪が顔周りを華やかに飾り、髪型に躍動感を与えます。
びら簪（びらかんざし）: 「びら止め」とも呼ばれることがあります。細長い金属片が連なり、歩くたび、あるいは頭を動かすたびに揺れて光を反射する簪です。そのきらめきと動きが、若い舞妓の瑞々しい魅力を引き立てます。
玉簪（たまかんざし）: シンプルな玉状の飾りが特徴の簪です。他の複雑な飾りの中で、色彩のアクセントや形状のバランスを取るのに用いられることがあります。
根挿し（ねざし）: 髪の生え際や根元付近に挿される比較的小ぶりの飾りです。全体の髪型を引き締めたり、細部に繊細な美しさを加えたりする役割を担います。

これらの髪飾り一つ一つが、割れしのぶという髪型を構成する重要な要素であり、それぞれが舞妓の若さ、美しさ、そして季節感を表現するために工夫されています。

割れしのぶは、舞妓が経験を重ね、より成熟した姿へと変化していく過程における、まさに初期段階の象徴とも言える髪型です。この華やかで愛らしい姿は、京都の街を彩る存在として多くの人々に親しまれています。

時間が経過し、舞妓が一人前としての段階に進むと、結う髪型も割れしのぶから別のスタイルへと変わっていきます。割れしのぶは、限られた期間にのみ見られる、貴重で特別な髪型なのです。

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