劇伴

劇伴について

劇伴（げきばん）は、映画、テレビドラマ、演劇、アニメといった視覚表現に合わせて演奏される音楽のことを指します。この音楽は、視覚作品のストーリーや感情を補完し、観客に深い印象を与える役割を果たしています。劇伴は「劇中伴奏音楽」の略であり、通常は器楽曲を指すことが多いですが、必ずしもそうではありません。

サウンドトラックとBGM

サウンドトラックは、元々は音声付き映画のフィルムに設けられた音声信号のための帯部分を指していましたが、現在では劇伴が収録されたCDやレコードなどの商品名としても使用されます。特に、一つの映画のために特別に作られた劇伴を「オリジナルサウンドトラック（OST）」と呼ぶことがあります。

BGM（バックグラウンドミュージック）は、映像作品において主題ではなく背景として流れる音楽を指します。これは飲食店や雑踏で流される音楽も含まれます。映画やドラマといった映像作品でのBGMは、視覚情報と合わせられますが、主に不明瞭な形で流れるため、観客の注意を逸らさず、落ち着いた雰囲気を作り出す役割があります。

劇伴の役割

ミシェル・シオンの著書『映画の音楽』には、映画内の音を「イン」「アウト」「画面外」の三種類に分類したものがあります。インは画面内で実際に鳴っている音、画面外は登場人物には聞こえているが画面には映っていない音、アウトは劇中世界の外で流れている音と定義されます。劇伴はこの「アウト」に含まれ、作品の雰囲気や物語の深さを強調する重要な要素です。

いくつかの映画では、アウトと画面外の境界を巧みに利用した演出が行われます。たとえば、アルフレッド・ヒッチコックの『間諜最後の日』では、教会の中でオルガンの音が長く流れますが、実はオルガンを弾いている男が亡くなっているという設定で、音楽が劇中の重要な要素として視覚的な情報をより深く引き立てています。

また、黒澤明の『野良犬』では、終盤に主人公が格闘しているシーンで、近隣の家から流れている清楚なピアノ曲が流れることで、場面に対する意外性を生み出します。このように、劇伴音楽は物語と映像の融合を助け、観客の感情を誘導するための重要な要素なのです。

劇伴作曲家の一覧

劇伴音楽を作曲する作曲家にも注目が集まります。日本の映画やテレビドラマにおいて活躍している作曲家の中には、荒木一郎、池頼広、菅野よう子、大友良英、坂本龍一など、多くの顔ぶれが存在します。彼らの作品は、それぞれ独特なスタイルや表現力を持ち、視覚作品を彩る大切な存在です。

劇伴音楽は、視覚メディアにおける不可欠な要素であり、情感や緊張感を高めたり、物語に深みを与えたりする役割を担っています。これからも、より多くの作品で新たな響きを生み出すことが期待されています。

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