劇場所有者出演契約協会

劇場所有者出演契約協会 (T.O.B.A.) の歴史と影響

劇場所有者出演契約協会（T.O.B.A.）は、1920年代から1930年代にかけて、アフリカ系アメリカ人の芸能人に特化した興行組織として知られています。この協会の目的は、ジャズやブルース、コメディなどのパフォーマンスを通じて、黒人の聴衆に多様なエンターテインメントを提供することでした。

1. 設立の背景

T.O.B.A.は、ヴォードヴィル界の影響力を持つシャーマン・H・ダドリーによって創設されました。彼は1909年頃、「ローン・スター・コメディアン」として知られ、多くの黒人が所有する劇場を舞台にするための活動に取り組みました。ダドリーは黒人芸能人のために安定した興行環境を整えることを目指し、1911年には有色人俳優組合の総支配人に就任し、劇場の取得や運営を手がけました。これを起点に、ダドリーの巡業サーキットが成長し、T.O.B.A.の基盤が築かれたのです。

2. サーキットの発展

1916年までには、ダドリー・サーキットは南部や中西部など広範囲にわたり、黒人の芸能人が長期契約を結び、舞台に立つ機会が増えました。このサーキットは、黒人コミュニティにおいて大きな影響力を持つ存在となり、特に「What’s What on the Dudley’s Circuit」と題されたコラムによって宣伝されていました。

1920年代のピーク時には、T.O.B.A.は100以上の劇場を組織し、黒人芸人に特化した「トビー・タイム」という名称で知られていました。これは、ヴォードヴィルのサーキットの一形態を示す言葉で、東海岸を中心に活動していました。T.O.B.A.の劇場は、他の興行団体に比べて報酬は低かったものの、黒人芸能人たちにとって重要なパフォーマンスの場でした。

3. 主なパフォーマーと演目

T.O.B.A.には、エセル・ウォーターズやベッシー・スミスなどの著名な歌手、そしてデューク・エリントンやルイ・アームストロングといった音楽家が参加しました。また、ホイットマン姉妹一座やティム・ムーアのシカゴ・フォーリーズといったコメディグループも活動を行いました。ユニークな才能が集まり、多様なエンターテイメントが提供されたことから、T.O.B.A.は文化的な重要性を持つ舞台として認識されていました。

4. 終焉とその影響

しかし、T.O.B.A.は大恐慌の影響を受け、次第に人気を失っていきました。多くの黒人劇場は、他の地域での興行の機会を持たず、巡業の手配も劣悪でした。最盛期には多くのスターたちを輩出したものの、最終的には他の興行団体と同様の運命に見舞われました。T.O.B.A.の活動は、やがて文化的な遺産として捉えられ、黒人芸能人にとっては困難な時代でもありながら重要なプラットフォームであったと評価されています。

T.O.B.A.は、その存在がなければ、アフリカ系アメリカ人のエンターテイメント界の発展は考えられなかったでしょう。その歴史は、現在もなおアメリカのエンターテイメント文化に影響を与え続けています。

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