劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、2021年に公開された日本のアニメーション映画です。監督は古川知宏、制作はキネマシトラスが担当しました。2018年に放送されたTVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』、そしてその総集編である『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』の正当な続編として制作されました。

2022年には、東京アニメアワードのアニメファン賞で2位を獲得。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では審査委員会推薦作品に選ばれるなど、高い評価を受けています。

あらすじ

物語は、神楽ひかりが愛城華恋と決別する衝撃的なシーンから幕を開けます。舞台は3年生に進級した華恋たち。後輩への指導に励む傍ら、卒業後の進路について悩み始めるメンバーも。進路が決まらない華恋を中心に、彼女たちは新たな舞台「ワイルドスクリーンバロック」に挑むことになります。

「ワイルドスクリーンバロック」では、大場ななによる「皆殺しのレヴュー」、石動双葉と花柳香子による「怨みのレヴュー」、神楽ひかりと露崎まひるによる「競演のレヴュー」、星見純那と大場ななによる「狩りのレヴュー」、天堂真矢と西條クロディーヌによる「魂のレヴュー」といった、個性豊かなレヴューが繰り広げられます。

物語終盤、華恋はひかりと対峙しますが、舞台少女としての覚悟が足りず、一度は命を落としてしまいます。しかし、彼女の遺体を乗せた列車が嵐を突き抜ける中で、華恋は舞台少女としての覚悟を新たに生まれ変わります。そして、華恋とひかりによる最後のレヴュー「最後のセリフ」によって、「ワイルドスクリーンバロック」は幕を閉じ、『レヴュースタァライト』は完結を迎えます。物語の最後で、登場人物たちはそれぞれの新たな舞台へと歩み始めるのです。

ワイルドスクリーンバロック

本作の舞台となる「ワイルドスクリーンバロック」は、時間や空間を自由に飛び越えるSFのジャンル「ワイドスクリーンバロック」をモチーフにした造語です。監督の古川知宏が描きたかった「野生の舞台少女」というテーマが加わり、貪欲に舞台へ向かう少女たちの姿を表現する舞台として創り上げられました。また、映画の画面サイズであるシネスコ（シネマスコープ）のワイドスクリーンにもかけたネーミングとなっています。

脚本の樋口達人は、この「野生の舞台少女」について、古川監督が本作のテーマとしてD.H.ローレンスの詩『自己憐憫』を掲げていたことを指摘しています。この詩には、野生の中で生きるものの覚悟や本能、誇り高さが描かれており、舞台少女たちが「普通の女の子の喜び」を燃やして舞台に立つ姿や、新たな舞台を目指して進み続ける本能を描こうとしたのではないかと推測しています。

レヴュー

TVシリーズにおけるレヴューは、一人のスタァを決めるためのものでしたが、劇場版におけるレヴューは、9人の登場人物それぞれが自身の青春に決着をつけるためのものとして描かれています。

制作の裏側

劇場版の制作にあたっては、テーマがゼロから再構築されました。「3年生になった99期生」「それぞれの進路」といった要素が生まれ、「完全無欠の主人公だった愛城華恋を人間にする」ことが、劇場版の軸として決定されました。

TVシリーズでは、全12話で9人全員の物語を描く必要があったため、華恋には「舞台装置」としての役割を与えざるを得ない部分があったと脚本の樋口は語ります。また、古川監督も、TVシリーズでは華恋のポジティブな面が強調され、内面までは描写されていなかったことを全員が感じていたと述べています。華恋役を演じた小山百代自身も、「華恋がどんな子かつかめない」と語っていたそうです。古川監督によると、主人公でありながら自分が演じるキャラクターを理解できないまま演じ続ける小山の「不安と揺らぎ」が、劇場版における華恋のキャラクターそのものになったといいます。

劇場版では、華恋を取り巻く人物を登場させることで、彼女の過去を拡張させ、『レヴュースタァライト』の世界観をさらに深める試みがなされました。男性キャラクターがほとんど登場しなかったTVシリーズとは対照的に、華恋の過去に男の子を登場させた理由について、古川監督は、男の子がいない空虚な世界に華恋の過去を設定したくなかったと述べています。

演出

TVシリーズでは東京タワーがモチーフとして用いられていましたが、劇場版では一貫して「列車」が重要なモチーフとなっています。古川監督は、列車をモチーフにした理由について、重たい金属の塊を出したいという考えから、TVシリーズのモチーフであった東京タワーに至る道を探した結果、鉄道がふさわしいと考えたと語っています。キャラクターが次のステージや舞台に進む過程では必ず列車が登場し、人生の新たなステージへ向かうためのモチーフとして意識的に取り入れられています。

また、本作ではトマトも象徴的に用いられています。トマトは舞台少女を燃やす燃料として描かれており、日常的なものを印象的に昇華させる古川監督らしい演出として評価されています。

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