劉勰

劉勰：南朝を代表する文人、その生涯と『文心雕龍』

劉勰（りゅう きょう、生没年不詳）は、南朝斉から梁にかけて活躍した文人であり、官僚です。その名声は、中国文学史における金字塔ともいえる著作『文心雕龍』の著者として広く知られています。本記事では、劉勰の生涯、学問、そして『文心雕龍』を中心に、その業績を詳しく見ていきます。

貧しいながらも学問に励んだ青年時代

劉勰は、東莞郡莒県を本貫とし、前漢の斉悼恵王劉肥の子孫にあたります。越騎校尉の劉尚の子として生まれた彼は、幼くして父を亡くしました。しかし、貧しいながらも学問への強い情熱を持ち、勉学に励みました。経済的な困窮から結婚することもできず、僧祐という沙門を頼り、十数年もの間、その家に身を寄せて生活していたと伝えられています。

この間、彼は経典や仏教論書を広く学び、それらを分類整理し、自ら序文を付けるなど、学問への探究心は並々ならぬものでした。定林寺の経蔵の整備にも携わっており、その整理方法は、後世にまで影響を与えたと言われています。

官僚としてのキャリアと『文心雕龍』の完成

梁の天監初年、劉勰は奉朝請という役職に就き、官僚としてのキャリアをスタートさせます。その後、臨川王蕭宏に召し出され中軍記室を兼任、さらに車騎倉曹参軍に転じました。太末県令に任命された際には、清廉な統治で知られ、民衆からの信頼も厚かったようです。

こうした官僚としての経験は、彼の文学観や政治思想に影響を与えたことは想像に難くありません。そして、この頃、劉勰の代表作である『文心雕龍』50篇が完成します。本書は、古今東西の文体を論じたもので、中国文学批評史上に燦然と輝く金字塔と言えるでしょう。その内容は、後世の文学者たちに多大な影響を与え続け、現在もなお研究が続けられています。

南康王蕭績の下で仁威記室、東宮通事舎人を兼任、さらに歩兵校尉に転じるなど、順調にキャリアを積んでいきます。特に、文学を愛好した昭明太子には文才を高く評価され、厚遇されたと伝えられています。

仏教への帰依と晩年

劉勰は、仏教に深く帰依しており、建康の寺塔や名僧の碑誌の文章を数多く制作しました。武帝の命を受けて慧震と共に定林寺で経証の編纂にも携わります。その完成を機に、出家を志望。髪と髭を自ら焼き払い、出家への強い意志を示した劉勰の決意に、武帝も許しを与えました。

得度して慧地と改名した劉勰でしたが、出家生活は長くは続きませんでした。わずか1年足らずで亡くなったと伝えられています。その死は、多くの後進たちに惜しまれ、劉勰が残した功績は、現在もなお人々の記憶に深く刻まれています。

劉勰の著作

劉勰の代表的な著作は、前述の『文心雕龍』ですが、他にもいくつかの作品を残しています。

『文心雕龍』：中国文学批評史上の金字塔。50篇から成る膨大な著作で、古今東西の文体を網羅的に論じています。
『滅惑論』：『弘明集』巻8に収録されている。
『梁建安王造剡山石城寺石像碑』：『会稽掇英総集』巻16に収録されている。

以下は、劉勰の著作として伝えられていますが、その帰属については異説もあります。

『劉子』：劉昼の作とする説もある。
* 『出三蔵記集』：僧祐の作とする説もある。

まとめ

貧しいながらも学問を志し、官僚としてのキャリアを積みながら、中国文学史に不朽の名作『文心雕龍』を残した劉勰。その生涯は、まさに波乱に満ちたものでした。仏教への深い信仰と、文学への情熱を生涯にわたって持ち続けた彼の生き様は、後世の人々に大きな影響を与え続けています。彼の著作は、現代においても研究が続けられ、その思想や文学観は、今もなお新鮮な輝きを放ち続けています。

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