功刀亀内

功刀亀内とその郷土史料の蒐集

功刀亀内（くぬぎ きない）は、1889年に山梨県で生を受けた実業家であり、郷土史料蒐集家でした。彼が収集した史料群は「甲州文庫」と名付けられ、今日まで多くの人々に親しまれています。亀内は、豊村（現在の南アルプス市上今井）で生まれ育ち、蚕糸業を営む家に育ちました。彼の実家は伝統的な蚕糸業者であり、亀内が家業を手伝いながら成長していく中で、地元の歴史や文化への関心が芽生えていきました。

亀内は豊村高等小学校を卒業後、家業に従事しましたが、1919年に結婚し、甲府市へ転居。約30歳の時にはオートバイに熱中し、それを使ってツーリングを楽しむ一方で、本業の蚕糸業に力を入れていました。彼の趣味は後に郷土史に対する関心を高めるきっかけとなり、特に江戸時代の飛脚制度に興味を抱くことになりました。これを知るために、彼は郷土史家の土屋夏堂を訪れ、歴史的な資料に触れ、郷土史への探究心を一層深めることとなりました。

1922年には、経済の変動を受けて東京に移り、布団業に転職しますが、同時に史料の収集に専念しました。この間に彼は、史料の整理や修復作業を行いながら、全国各地に赴き、貴重な資料を集める活動を続けています。亀内は単に資料を集めるだけではなく、その保存や研究にも力を注ぎました。特に、戦時下でも蒐集した史料の疎開を行い、戦災からも多くの資料を守ることに成功しました。

亀内が手掛けた「甲州文庫」は、山梨県の文化や歴史を後世に伝えるために重要な役割を果たしました。彼は数々の地域の資料を集め、地元の社寺への奉納も行っており、武田神社には信玄に関する史料を寄贈しました。また、彼は生涯にわたり多くの市民に郷土の歴史を伝える活動を行い、地域社会における文化的な理解と関心を深めました。彼の努力は、1951年に「甲州文庫」が山梨県に譲渡される際にも評価されており、これにより多くの市民がその存在を知ることとなりました。

さらに、「甲州文庫」はその後、山梨県立図書館や、2005年に開館した山梨県立博物館に移管され、現在でも多くの人々に利用されています。亀内は自身の活動を通じて、山梨県の文化と歴史を豊かにすることに貢献し、その成果は今なお地元の人々に受け継がれています。亀内の著作には、1932年に発行された『甲州俳人伝』があり、これも彼の郷土への強い情熱を示す一例です。

このように、功刀亀内の郷土史料の蒐集活動は、彼の生涯を通じての情熱と努力の結晶であり、今後も山梨県やその周辺地域の歴史を語る大事な資料として位置付けられることでしょう。

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