加々見山旧錦絵

『加々見山旧錦絵』

『加々見山旧錦絵』とは、義太夫節と人形浄瑠璃の演目であり、1782年1月に江戸で初演された作品です。全体は11段構成ですが、実際には9段目まで上演されており、脚本は容楊黛によって書かれています。この物語は、加賀藩で起きた加賀騒動を題材としており、特に人間ドラマが描かれた作品です。

初段 - 鹿狩の段

物語の始まりは、関東管領の足利持氏が家臣と共に鹿狩りを行う場面からです。足軽の源蔵が意図的に鹿を逃がしたことで、一瞬持氏は不満を抱くものの、源蔵の理非を通す姿に感心を抱きます。この後、京都から細川頼之が訪れ、持氏に赤松満祐の残党への警告と、持氏の弟縫之介との婚儀について伝えます。

二段 - 梅沢村茶店の段

源蔵の妻お来が経営する茶店を舞台に、浪人の高木十内とその娘お初が登場します。善六と名乗る人物が登場し、十内に金を返すよう要求するが、商人の坂間伝兵衛が金を工面して助けます。また、道芝という遊女が絡んだ人間関係も描かれています。道芝は持氏の弟縫之介に恋しており、複雑な恋模様が展開されます。

三段 - 足利家広間の段

道芝は男装して持氏の館に忍び込みますが、許婚の操姫と出くわし、三角関係の緊張が生まれます。持氏がこの場に現れ、道芝が身分を明かすと、源蔵はその申し開きに感心し、事態は進展します。しかし、持氏は自らの運命を知ることになるのです。

四段 - 野道の段

道芝の父、眼兵衛は複雑な感情を抱えつつ、家族のために動き出します。道芝は縫之介と結ばれたことを巡り父と対立します。結局、道芝の恋と実家への帰還がテーマとなり、家族間の葛藤が描かれます。

五段 - 眼兵衛内の段

眼兵衛が重病の妻のために大金を工面しようとする様子が描かれます。お来は廓に身を売る覚悟を決めますが、妹の道芝との再会が二人の人生を交錯させます。この段では、彼女たちの運命が交差し、劇的な展開が待っているのです。

六段 - 鶴岡八幡の段

持氏の正室、花の方は神社に参詣しますが、そこでさまざまな人間関係や因果が絡んできます。岩藤との争いや、奥女中たちとの関係が描かれ、登場人物の闇や秘密が浮かび上がります。

七段 - 足利家長局の段

持氏の正室に仕える奥女中たちの細やかな人間ドラマが織り交ぜられ、一人の少女が痛ましい状況に置かれる様子が描かれます。ここでの葛藤は、先に見えた運命が再び立ち上がり、物語を深めていきます。

八段 - 道行恋の幻

物語は幽霊や夢を用いて現実と非現実の境界を曖昧にし、愛や後悔が交錯します。ここでは、一つの夢が二人の心情を表す手法として用いられます。最終的には、全ての関係が繋がり、加賀騒動に絡む運命が再現されるのです。

解説

『加々見山旧錦絵』は、最初の11段から9段までの構成となり、特に前半の人間関係が強く描かれています。物語は独立した作品として完結せず、次第に他の舞台作品と相互に絡み始めました。加賀騒動を背景にしたこの作品は、歴史的背景と個々の人間ドラマが見事に交差し、今なお多くの観客に愛され続けています。

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