加古川西市民病院

加古川西市民病院は、かつて兵庫県加古川市に所在した公立の医療機関です。長年にわたり地域医療に貢献してきましたが、2016年 7月1日に加古川中央市民病院が開設されたことに伴い、公立病院としての役割を終え閉院しました。しかし、その歴史的な建物の一部は、閉院後も改修を経て別の医療施設として活用が続けられています。

運営主体の変遷

この病院の設立当初は、国民健康保険一部事務組合の附属病院として運営されていました。時を経て、その運営主体は加古川市へと移管され、公立病院としての性格を強めました。さらにその後、地方独立行政法人加古川市民病院機構が設立され、その運営下に入るといった変遷をたどっています。これらの組織変更は、当時の医療制度や地域の行政構造の変化を反映したものです。

沿革に見る歩み

加古川西市民病院の源流は、1950年（昭和25年）10月6日に開設された「米田町外二ヶ村国民健康保険一部事務組合附属宝殿病院」にあります。これが病院の始まりであり、地域住民の健康保険医療を担う機関として誕生しました。

その後の市町村合併により、1956年（昭和31年）9月30日には「加古川市高砂市国民健康保険直診一部事務組合宝殿病院」と名称が変更されました。さらに、1960年（昭和35年）1月には、高砂市から病院に関する全ての権利が加古川市に譲渡され、「加古川市民病院」として再出発を切りました。

施設の近代化も積極的に進められました。1978年（昭和53年）6月には本館が完成し、より充実した医療環境が整備されました。加えて、1995年（平成7年）11月には別館も竣工し、病院の機能強化が図られています。

21世紀に入り、地域医療における役割はさらに重要視されるようになります。2011年（平成23年）3月1日には、地域医療支援病院の指定を受け、地域の医療機関との連携を深めつつ、高度医療や救急医療を提供する拠点としての役割を担うことになりました。

同年4月1日には、病院の運営形態が大きく変わります。地方独立行政法人加古川市民病院機構が設立され、加古川市民病院はその経営に移管されるとともに、「加古川西市民病院」と名称を改めました。この組織変更は、加古川市が進めていた地域医療再編計画の一部であり、将来的に加古川市民病院と神鋼加古川病院（加古川東市民病院）を統合し、新たな中核病院を設立するという目標が掲げられていました。

しかし、こうした大規模な病院再編の過程では予期せぬ出来事も発生しました。2012年（平成24年）7月13日には、加古川市の元企画部長が、病院統合に関連する事務手続きにおいて特定の業者に便宜を図り、その見返りに現金を受け取ったとして収賄容疑で逮捕されるという事件が起こり、社会的な注目を集めました。

様々な曲折を経ながらも、新たな拠点病院の建設は進められ、2016年（平成28年）7月1日、加古川中央市民病院が開院しました。これをもって、加古川西市民病院は公立病院としての長い歴史に幕を閉じ、閉院となりました。

閉院後、加古川西市民病院の全ての機能が失われたわけではありません。旧中央診療棟の建物は改修され、2018年（平成30年）4月1日からは、医療法人社団一功会によって運営される回復期リハビリテーションを専門とする病院、「フェニックス加古川記念病院」として生まれ変わり、引き続き医療提供の場として活用されています。

提供されていた医療体制

閉院まで、加古川西市民病院は地域の中核病院として、多岐にわたる診療科を提供することで、幅広い疾患やニーズに対応していました。具体的には、内科、精神・神経科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、小児外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、臨床検査科、リハビリテーション科、栄養管理科といった多くの専門分野を擁しており、総合的な医療サービスを提供できる体制を整えていました。

交通アクセス

病院への交通アクセスは、JR神戸線の宝殿駅から徒歩でおよそ8分と、比較的公共交通機関を利用しやすい立地にありました。

加古川西市民病院