加賀温泉郷マラソン

加賀温泉郷マラソン

加賀温泉郷マラソンは、石川県加賀市を舞台に、一般市民が参加できる形で開催されていたマラソン大会です。2013年に第1回大会が開催されて以来、地域のランニングイベントとして定着を目指しましたが、運営上の様々な課題や外部環境の変化に直面し、2023年の開催をもってその歴史に幕を下ろしました。

本大会では、本格的な長距離走を目指すランナーから、気軽に参加したい層まで、幅広いニーズに対応するため、複数の種目が設けられていました。中心となるフルマラソン（42.195キロメートル）に加え、10キロメートル、5キロメートル、そしてファンランとして位置づけられた2.5キロメートルといった多様な距離設定が特徴でした。特にフルマラソンについては、最大で4000人の参加枠が設けられており、多くのランナーに加賀の地を走る機会を提供していました。

しかしながら、大会の開催期間を通じて、順風満帆とは言えない道のりをたどりました。特に記憶されるのは、第2回大会として予定されていた2014年の突然の中止です。この決定については、表面的な理由として財政状況の悪化などが挙げられましたが、実際には当時の市長交代に伴い、前市政下での取り組みを否定する意図があったとされる、政治的な背景に起因するものであったとされています。既に大会開催に向けた広報活動や、前回大会の参加者への案内なども行われていたにもかかわらず、一方的な形で中止が強行されたため、この決定は各方面から強い反発と多くの苦情を招くこととなりました。結果として、この強い批判を受け、大会は翌年から再開されることになります。

その後も、大会の開催には様々な困難が伴いました。例えば、第4回大会にあたる2016年には、悪天候、特に暴風の影響により大会が中止を余儀なくされました。さらに、国内外で感染症が拡大した影響を受け、2020年および2021年の大会も中止となりました。

特に混乱を招いたのは、2022年の大会でした。この年の大会では、開催直前になって参加者に対する規程の変更が行われました。具体的には、PCR検査による陰性証明書の提出が義務付けられるなど、急な条件変更が参加を予定していた多くのランナーに混乱をもたらしました。この突然の規程変更により、必要な手続きを期日までに完了できない参加者が続出し、結果として、参加を断念せざるを得ないランナーが多数発生し、参加予定者の約半数が棄権するという異例の事態となりました。

度重なる中止や運営上の混乱を経て、最終的に加賀市は、2023年4月に開催された大会をもって、加賀温泉郷マラソンの実施を終了することを決定しました。約10年間の歴史の中で、多くのランナーに親しまれた大会でしたが、その裏では様々な困難との戦いがあり、惜しまれつつも廃止されることとなりました。

大会の公式サイトやFacebookページは、かつての開催の記録として現在もその存在を残しています。これらの記録は、加賀温泉郷マラソンが地域にとってどのような存在であったか、そしてその歴史を物語る貴重な資料となっています。

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