助郷

助郷制度の概要

助郷（すけごう）は、江戸時代の日本において見られた労働課役の一形態であり、宿場の保護や交通需要の増加に応じて人馬を提供するために周辺の村落に課せられた義務です。この制度は、最初は臨時的な人馬の徴発から始まりましたが、参勤交代などで交通需要が増すにつれて、恒常的な制度へと変化しました。助郷制度は、宿場周辺の村を助郷村（すけごうむら、すけごうそん）と称し、これらの村が義務として人馬を提供する仕組みでした。

助郷村とその区分

助郷村は、初めのうちは宿場の近隣に限られていましたが、次第に10里以上離れた村にも拡大しました。助郷での人馬提供の単位となった村は「定助郷」「代助郷」などと分類され、さまざまな名前が使われました。もし村が人馬を提供できない場合、その代わりに金銭を納めることが可能でした。これにより、助郷の義務が軽減される一方で、金銭での代納が広まっていきました。

しかし、助郷の義務は村民にとって重い負担となり、早朝から夜間までの労働が強いられ、しばしば宿場での宿泊が必要となりました。このため、村民たちには経済的な負担がかかり、法定の報酬は非常に少なく、実質的には村民生活の負担が大きかったとされています。近年の研究では、この制度が与えた影響や間接的な被害についても言及されており、助郷務めが原因で宿場女郎に身を持ち崩す者があったことも報告されています。

助郷制度の変遷

日光道中などでは、1696年に常設の「定助郷」が編成されました。最初は宿なお要請を受け、知行する領主の責任が大きかったため、道中奉行による定助郷の固定化が求められました。江戸時代末期には宿場の人馬需要が激増し、それに伴い村の財政や農民生活への影響が増大しました。特に、丸山雍成の研究によると、このような負担は村の財政を圧迫し、助郷役に関する紛争が頻繁に発生していたことが示されています。

江戸後期の中山道の宿駅でも、宿駅の繁栄に伴って無賃または低賃金の伝馬役を強いられる村民の苦境が見られ、各地で政府に対して減免を願う声が上がりました。その影響により、助郷村の財政が困窮し、多くの村が経済的に困難な状況に陥りました。

助郷制度の廃止

最終的には、明治5年（1872年）に助郷制度は廃止されました。この制度は、当時の日本における交通網を支える重要な仕組みでしたが、同時に村民に過剰な負担を強いるものでした。助郷制度の歴史を振り返ることは、当時の農民の生活や社会構造を理解する上で重要な要素となっています。

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