動く指

小説『動く指』の概要

『動く指』は1942年にアガサ・クリスティによって発表された推理小説で、ミス・マープルシリーズの第3作です。クリスティ自身のお気に入りとしても知られ、作品の魅力は多くの読者に愛されています。この物語は、戦時中の静かな町で発生した一連の事件を通じて、人間関係や誹謗中傷の危険性を描いています。

あらすじ

物語は、重傷を負ったジェリー・バートンが、妹のジョアナと共に静養のためリムストックへ向かうところから始まります。彼らが町で新生活を始めると、差出人不明の手紙が届きます。手紙には、「彼らが本当の兄妹ではない」といった誹謗中傷が書かれていました。ジェリーはその内容ににわかには信じられず、手紙を破り捨てますが、町の医師グリフィスに相談すると、リムストックでは過去にも類似の怪文書が出回っていたことを教えられます。

この怪文書事件は、事務弁護士の妻モナ・シミントンの悲劇をきっかけに思わぬ方向へ進展します。モナは手紙の内容に苦悩し、服毒自殺を遂げてしまいます。モナの遺体の近くには「もう無理」という破れたメモが見つかり、彼女が以前から精神的に不安定だったことから、手紙が原因での死亡と見なされます。

さらに、この事件はシミントン家の手伝いアグネスが行方不明になるという新たな事態を引き起こします。アグネスは行方不明の直前に、リトル・ファーズ邸のメイドに相談をしていましたが、その後姿を消します。翌朝、ジェリーはミーガンという女性から電話を受け、シミントン家での異変を感じ取ります。

事件の展開

ジェリーがシミントン家に赴くと、行方不明だったアグネスが他殺体で発見されます。この事態を受けて、牧師夫人はミス・マープルを呼び寄せ、事件の真相究明に動き出します。事務弁護士のディック・シミントンは、モナの前夫との娘であるミーガンをめぐって問題が複雑化していきます。

ミス・マープルは、様々な証拠を集めつつ、手紙の真意や登場人物たちの関係を調査していきます。シミントン家の家庭教師エルジーも匿名の手紙を受け取る場面が描かれ、彼女も事件に深く関わっていく様子が描かれます。さらに、警察が手紙の送り主を間違えて逮捕するなど、ミステリーの要素が絡み合う展開が続きます。

クライマックスと結末

事態が進展する中、ジェリーは徐々にミーガンに対する恋心に気づき、彼女が自分を愛していることにも気付きます。ミス・マープルは事件の核心に迫るべく、計画を立てます。シミントンが手紙の正体を暴かれた後、彼は妻モナとアグネスを殺害した罪で逮捕されます。

最終的に、ジェリーとミーガンは結ばれることになります。物語のラストでは、リムストックの町におけるキャラクターたちの新しい生活が描かれ、物語にひとつの区切りがつけられるのです。

登場人物

• - ジェリー・バートン：本作の語り手で、療養のためにリムストックに来た傷痍軍人。
• - ジョアナ（ジョー）・バートン：ジェリーの妹。
• - リチャード（ディック）・シミントン：事務弁護士。
• - モナ・シミントン：シミントンの妻。
• - ミーガン・ハンター：モナの前夫の娘。
• - ミス・マープル：物語の探偵役。

本作は、アガサ・クリスティの緻密なストーリーテリングと登場人物の深い描写によって、読み手を引き込む力を持っています。ミステリーの魅力が詰まった『動く指』は、多くの読者に愛され、映像化もされている名作です。

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