動吻動物

動吻動物の特徴と生態

動吻動物（どうふんどうぶつ、学名：Kinorhyncha）は、長さ1 mm以下の小型無脊椎動物で、主に潮間帯から超深海までの泥や砂の間隙に生息しています。この動物は、南極や北極を含む極地から熱帯地域まで、広範囲に分布しており、間隙生動物としても知られています。また、汽水域や海藻、フジツボなどの中の隙間でも見られることがあります。

形態的な特性

動吻動物の体は、主に頭部（吻部）、頸部、さらに11体節からなる胴部の3つの部分に分かれています。従来の分類では、頭部は第1体節、頚部は第2体節、胴部は3 - 13体節とされていましたが、現在では前述の呼称が一般的です。頭部には無数の冠棘があり、これを出し入れすることで移動します。この動きに伴い、頭部が胴部に引き込まれ、頸部がその隙間を塞ぐ役割を果たします。

胴部の各体節は1 - 4枚のプレートで構成されており、体表面には棘や管、感覚器、分泌口などが見られます。棘は表皮から分泌されるクチクラの一部であり、成長の過程でしばしば脱落し再生されます。

生態についての理解

動吻動物は、海藻の間や泥中に含まれる珪藻やデトリタスと呼ばれる有機物を食べています。前進する際には頭部の冠棘を駆使し、体に生えた棘も運動を助けます。また、体を腹側に曲げることも可能です。

この動物は、特に酸素濃度が高い砂泥に多く見られ、時にはその個体数が他の生物、例えば線虫やソコミジンコよりも優位になることがあります。一方で、貧酸素環境には弱く、汚染された海域では迅速に姿を消すため、海洋の汚染状態を示す指標生物としての利用が期待されています。

成長期には脱皮を行い、脱皮殻はほぼ元の形を保っています。動吻動物は雌雄異体であり、雄は終端体節に交尾棘、雌は生殖孔を持っています。幼生は自由に生活することが知られていますが、生殖や初期発生についての情報はほとんど解明されていません。

系統的背景

かつて動吻動物は、線形動物や輪形動物、腹毛動物などと同様に袋形動物門に分類されていましたが、現在ではそれぞれが独立した門として認識されています。系統的には、動吻動物は脱皮動物に含まれ、その中では胴甲動物や鰓曳動物に近いとされています。これらの3門を「有棘動物」とする考え方もありますが、分子系統解析の結果、鰓曳動物との親縁関係が支持されることが多い一方で、胴甲動物との関係はあまり支持されていません。

現在の分類

動吻動物の伝統的な分類では綱は設けられず、円蓋目（Cyclorhagida）と平蓋目（Homalorhagida）の2目に分けられていました。しかし、最近の分子系統解析の進展により、円蓋綱（Cyclorhagida）と異蓋綱（Allomalorhagida）の2つの綱からなる新たな分類体系が提唱されています。2020年において、円蓋綱には3目7科18属196種が、異蓋綱には4科13属111種が記載されています。

現在、日本からは24種が報告されており、動吻動物の多様性は今後さらに増していくことが期待されています。

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