動物命名法国際審議会とは？意味をやさしく解説

動物 命名法国際審議会 (ICZN)

動物命名法国際審議会（International Commission on Zoological Nomenclature, ICZN）は、動物学における学名の命名基準を設定し、動物の命名における安定性と意義を確保することを目指した国際機関です。この審議会は、動物の学名の規範となる「国際動物命名規約」を策定した著者であり、その役割は極めて重要です。

歴史

動物学の学名を定めるための基準が必要であることが明らかになったのは、1758年にリンネの『自然の体系』第10版が出版されてから1世紀以上経過した頃です。1889年、パリで開催された国際動物学会議においてこの問題が議論され、1895年にはライデンでの第3回国際動物学会議で動物学者5名が委員として任命されました。このことが動物命名法国際審議会の起源となります。

1901年の第5回国際動物学会議で『萬国動物命名規約』（Règles internationales de la Nomenclature zoologique）が採択され、翌1905年に初の国際的基準として発行されました。その後、この規約は『国際動物命名規約』に改定され、今なお動物名の安定性を保つための基盤となっています。1972年には、国際生物科学連合（IUBS）に権限が委任され、現在も審議会はその傘下で活動しています。

活動内容

動物命名法国際審議会の主要な活動は、以下の2つに大別されています。

1. 国際動物命名規約の発行
学名を決定する際の唯一かつ最も重要な国際基準である国際動物命名規約の編集・改訂・発行を行っています。最新の第4版は1999年に発行されています。

2. 命名学上の問題に対する裁定
提起された命名問題についての裁定を行い、その内容は季刊誌『動物学命名法雑誌』（Bulletin of Zoological Nomenclature）に掲載されます。この雑誌では、提案された問題、これに関する議論、及び最終的な裁定が公開されています。

ここで、いくつかの実際の裁定例を紹介します。

裁定の実例

- エスカルゴ

Helix lucorum と Otala punctata はどちらも食用の巻貝であり、産業的に重要な種です。しかし、H. lucorum の原記載標本が実はO. punctataであることが判明した際、審議会は後者を再度タイプ標本とし、いずれの学名も引き続き使用可能としました。

- ティラノサウルス

1892年に発表されたManospondylusという学名は、2000年に化石のさらなる調査により、ティラノサウルスと同一であることが判明しました。学名の安定性を考慮し、Tyrannosaurusの名を有効とする裁定が下されました。

- ヤマネ

日本固有の動物ヤマネの学名Glirulus japonicusについて、誤記とされたMyoxus javanicusが実際はGlirulus japonicusであると認定され、保護活動にも影響を及ぼさないよう慎重に取り扱われました。

- 家畜の命名問題

飼育される家畜種とその野生種が異なる学名を持つ場合、混乱が生じる可能性があります。そこで、2003年に審議会は17種の野生種の学名を保全名として認定し、両者を区別することなく学名が使用できるように対応しました。

委員構成

動物命名法国際審議会は、通常18名以上の委員で構成され、2009年時点では28名が19か国から選出されています。委員は動物学の専門家で、動物命名法に関心がある著名な研究者から構成され、推薦は事務局で受け付けています。

事務局の役割

事務局はロンドン自然史博物館の古生物学部門に置かれ、学名提案の保存や雑誌の制作を行っています。さらに、一般的な問い合わせや委員選出、規約改定なども担っています。

結論

動物命名法国際審議会は、動物学における命名基準を維持し続けることで、科学的な安定性を提供しています。動物名の安定性を保障するための活動は、命名に関心を持つ世界中の研究者にとって、非常に重要な役割を果たしています。

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