動物相

動物相：地域と時代の動物たちの物語

ある地域、ある時代に生息する動物たちの集合体を「動物相（Fauna）」と呼びます。植物の集合体である「植物相」に対応する概念で、両者を包含する「生物相」という用語も存在します。

ファウナの語源と歴史

「ファウナ」という名称は、ローマ神話の豊饒と大地の女神であるファウヌス (Faunus) に由来します。この名称は、スウェーデンの博物学者リンネが著書『スウェーデンの動物相 (Fauna Suecica)』で使用したことをきっかけに、特定地域や時代の動物相をまとめた書籍を指す言葉としても定着しました。

動物相の研究：多様なアプローチ

動物学者や古[[生物学]]者は、特定の地域や時代の動物相を「ソノラン砂漠の動物相」や「バージェス頁岩の動物相」のように表現し、その構成種を研究します。古[[生物学]]では、類似の化石を含む地層を動物群ステージとして分類、分析しています。

しかし、広範囲の動物相を網羅的に調査することは非常に困難です。動物はサイズ、生態、行動様式など多岐にわたり、分類群によって調査・採集方法も異なるため、すべての動物を網羅することは不可能に近いと言えるでしょう。そのため、動物相の研究では、意図的に調査範囲を設定する必要があります。

動物相の区分け：二つの主要な方法

動物相の区分けには、大きく分けて二つの方法があります。一つは、特定の分類群に限定する方法、もう一つは、生息環境によって分ける方法です。

分類群による区分

特定の分類群（例えば、昆虫、カエルなど）に焦点を当てて動物相を記述する際には、「日本の昆虫相」、「琉球列島のカエル相」といった表現が用いられます。種類数が多く、未解明な部分も多い分類群では、完全なリストの作成は困難なため、動物相の基本的な特徴や特性に着目する研究も重要となります。動物分類学者は専門分野を限定することが多いため、この方法は信頼性が高いと言えます。

生息環境による区分

生息環境が同じ動物は、同じ方法でまとめて採集できる場合があります。例えば、水中動物であれば、網ですくうことで様々な分類群の動物を一度に採取できます。しかし、網の目の大きさによって捕獲できる動物のサイズが大きく異なるため、大きさによるカテゴリー分けが必要になります。この手法は、特にプランクトンや底生動物、土壌動物の研究において用いられます。

プランクトン相は、植物プランクトンも含むため、生物相の一部と見なされることもあります。

サイズによる動物相の分類

生息環境による区分では、動物のサイズに基づいた分類も用いられます。

メガファウナ (Megafauna): 大型動物。オーストラリアの大型動物相などが例として挙げられます。
マクロファウナ (Macrofauna): 肉眼で識別できる大きさ（1mm以上）の底生動物や土壌動物。
ミクロファウナ (Microfauna): 顕微鏡的な大きさの動物（原生動物、小型のワムシなど）。
メイオファウナ (Meiofauna): ミクロファウナより大きく、マクロファウナより小さい小型の底生無脊椎動物。厳密なサイズ定義は研究者によって異なります。
メソファウナ (Mesofauna): 土壌中に生息する小型の無脊椎動物（トビムシ、ダニ、線虫など）。
ナノプランクトン: 20-2µmの大きさの微小な生物。
* ピコプランクトン: 2µm以下の大きさの微小な生物。

さらに、生息場所による分類として、水中の堆積物表面に生息する表生動物 (epifauna) と、堆積物内部に生息する内生動物 (infauna) があります。

動物相研究の未来

動物相の研究は、生物多様性の理解、生態系の保全、進化の解明に不可欠です。今後ますます高度な技術を用いた調査や分析が進むことで、より詳細な動物相の解明が期待されます。 多様なアプローチと分類方法を用いることで、私たちは動物たちの多様な世界をより深く理解し、未来への保全につなげることが可能となります。

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