勝抜きのど自慢

『勝抜きのど自慢』：ポピュラー音楽で100万円を目指した勝ち抜き歌謡番組

『勝抜きのど自慢』は、1966年10月5日から1967年3月29日までの約半年間、毎週水曜日の夜7時30分から8時までの30分間、フジテレビ系列の電波に乗せて届けられた視聴者参加型の音楽番組です。フジテレビが制作を手掛けたこの番組は、前番組にあたる『サトウ 勝ち抜きエレキ合戦』をリニューアルする形で誕生しました。

番組の基本的なコンセプトは、一般の視聴者が自慢の歌声を披露し、勝ち抜き形式でチャンピオンを目指すというものでした。各回の出場者は、前週からのチャンピオン1組に加え、新たに選ばれた4組の挑戦者で構成されました。

挑戦者たちはまず、それぞれ歌唱を披露し、審査員による採点を受けます。その中で最も高い得点を獲得した出場者が、現チャンピオンへの挑戦権を得て、文字通り「勝ち抜き」をかけた直接対決に臨みました。この対決に勝利した出場者が新たなチャンピオンとなり、次週の放送に駒を進めることができるシステムです。

この番組の最大の魅力であり、出場者たちの目標となったのが、高額賞金でした。見事、4週連続でチャンピオンの座を守り抜き、勝ち抜きを達成した出場者には、当時の金額としては破格とも言える賞金100万円が贈られるという、非常に夢のある、そして挑戦意欲を掻き立てるシステムが導入されていました。

番組の開始時や、チャンピオンが敗れて不在となった回においては、特別なルールが適用されました。これらの回には、チャンピオンを含まない5組の挑戦者全員が横一線で歌唱を披露し、その中で最高得点を獲得した出場者が、初代または新たなチャンピオンとして認定されるという形式が取られました。

前身番組である『サトウ 勝ち抜きエレキ合戦』からのリニューアルにあたって、いくつかの重要な変更点がありました。一つは、演奏・歌唱される楽曲のジャンルです。前番組がエレキサウンドに特化していたのに対し、『勝抜きのど自慢』ではより幅広い「ポピュラーものの歌」に限定されました。これにより、より多様なジャンルの歌唱が披露される機会が生まれました。そしてもう一つが、前述の優勝賞金100万円です。この破格の賞金額が、多くの視聴者にとって大きな関心事となり、番組の注目度を高める要因の一つとなりました。

番組は、放送期間中に一度タイトルを変更しています。1966年12月7日の放送分からは、『100万円勝抜きのど自慢』と、賞金額を冠した名称に改められました。これは、賞金100万円が番組の重要な特徴であることをより明確に打ち出すための変更と考えられます。

番組を進行する司会者としては、番組前期には鈴木やすし氏（後の鈴木ヤスシ氏）が、後期には長沢純氏が担当しました。また、審査員として、著名な作曲家である浜口庫之助氏らが名を連ね、出場者の歌唱力を厳しく、そして温かく評価しました。

短期間の放送ではありましたが、『勝抜きのど自慢』は、当時の視聴者参加型歌謡番組として、ポピュラー音楽に特化した形式と高額賞金という分かりやすい目標設定で、一定の存在感を示した番組と言えるでしょう。

もう一度検索