勝田孫弥

勝田 孫弥

（かつだ まごや、1867年9月22日 - 1941年8月21日）

明治期から昭和にかけて活躍した日本の教育家、歴史家。旧薩摩藩士族の家に生まれ、故郷である鹿児島県給黎郡喜入村（現在の鹿児島市の一部）で育ちました。

初期教育と法学研究

勝田孫弥は、まず教育者としての道を歩み始めました。1885年に鹿児島県師範学校の中等師範学科を卒業すると、同年中に地元である喜入小学校に訓導として着任します。その後、喜入高等小学校でも教鞭をとりましたが、1887年には依願により退職しました。教育現場を離れた後、彼は更なる学びを求め、上京します。1887年9月から1890年6月にかけて、私立明治法律学校（現在の明治大学）で法律科、行政科、そして仏語科を修め、幅広い知識を習得しました。

歴史家としての業績

明治法律学校での学びと並行して、あるいはそれを終えた後、勝田孫弥は日本の近代化にとって極めて重要であった明治維新史の研究に深く傾倒していきます。彼は特に維新期を牽引した主要人物の伝記研究に力を入れました。その研究成果は、数々の著作として結実します。

1895年には、早くから取り組んでいた西郷隆盛の生涯を詳細に記した大部の伝記『西郷隆盛伝』全5冊を刊行しました。この著作は、当時の学界を代表する歴史学者であった三上参次の校閲を受けており、その信頼性の高さを示しています。

その後も研究は続けられ、1911年には明治維新におけるもう一人の重要人物である大久保利通の生涯を追った『大久保利通伝』全3冊を同文館から出版しました。これらの伝記は、主要人物を通して明治維新の経緯や背景を理解する上で貴重な資料となりました。

さらに、1928年には維新期に関する逸話を集めた『甲東逸話』を冨山房から刊行するなど、晩年に至るまで精力的に歴史研究と執筆活動を続けました。

教育事業への貢献

勝田孫弥は歴史研究者であると同時に、教育家としても重要な役割を果たしました。1894年には、海外における日本の教育振興を目指す大日本海外教育会の創立に幹事として参画しました。

彼の教育における最も大きな貢献の一つは、女子教育の振興です。キリスト教徒の加藤俊子によって1889年に設立され、後に内村鑑三が校長を務めた時期もあった女子独立学校が経営難に直面していた際、勝田孫弥はこの学校を引き継ぐ決断をしました。そして、1902年にこれを改めて精華女学校（現在の精華学園）として開校しました。これにより、困難に陥っていた女子教育の灯を守り、発展させる礎を築きました。妻の勝田けいもこの学校の校長を務め、夫と共に教育に尽くしました。

公的な活動と栄誉

長年の歴史研究と教育への功績が認められ、勝田孫弥は公的な場でもその能力を発揮することを期待されました。1911年には、明治維新に関する公的史料の編纂に携わる維新史料編纂官に任じられました。この職務を通じて、日本の近代史研究の基盤整備に貢献しました。また、1929年10月1日には、国家に対する長年の功績が認められ、従四位に叙せられました。

晩年と家族

勝田孫弥は1941年8月21日に73歳でその生涯を閉じました。墓所は東京都府中市にある多磨霊園にあります。家族としては、教育者として精華女子高等学校の校長を務めた妻のけい、そして娘の鈴木哲子がいます。彼は歴史家、教育家として、明治から昭和にかけて日本の学術と教育の発展に多大な貢献を残しました。

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