勧業寮

勧業寮：日本の近代化を支えた殖産興業の中枢

勧業寮は、1874年（明治7年）に内務省に設置された、殖産興業を推進するための一等寮です。ブリタニカ小項目事典では1873年の設立とされています。太政官布告によって内務省の行政機構が定められ、勧業寮が置かれることになり、1月10日に業務を開始しました。

勧業寮から農商務省へ

勧業寮は、明治10年（1877年）1月に勧農局へと改編され、さらに明治14年（1881年）には農商務省へと昇格しました。この農商務省は、現在の農林水産省（旧農林省）と経済産業省（旧商工省、通商産業省）の源流となっています。つまり、勧業寮は、日本の近代化を支える重要な役割を果たした省庁のルーツと言えるでしょう。

設立の背景：欧米技術導入と国内農業の発展

勧業寮設立の背景には、欧米の農業技術を導入し、同時に日本の在来農法を発展させる必要性がありました。明治3年(1870年)に民部省勧農局が設立されましたが、翌年には大蔵省勧農寮となり、財政難のため一年で事業は頓挫してしまいます。業務は租税寮勧農課に引き継がれ、地方への委託も行われましたが、国は事業継続の必要性を強く感じていました。

そこで、内務省に勧農寮を設立する議論が進められ、最終的には三等寮から二等寮、そして一等寮へと格上げされました。業務内容も農務に加えて工商業務が移管され、農工商を総合的に奨励する機関として、内務省勧「業」寮が設立されるに至ったのです。

勧業寮の役割と影響

勧業寮は、単なる農業技術の導入機関ではありませんでした。農工商を一体的に推進することで、日本の産業全体の近代化を目指した、極めて重要な機関だったと言えます。その後の農商務省への発展、そして現代の農林水産省・経済産業省へと繋がる流れを見ても、勧業寮が日本の経済発展に果たした役割は非常に大きいと言えるでしょう。

参考文献

友田清彦、「内務省期の農政実務官僚と勧農政策の展開」『農村研究』 2008年 第106号 p.1-12, 東京農業大学農業経済学会
國雄行、「内務省の勧農政策(1873〜1881年) : 勧業諸会の分析を中心に」『社会経済史学』 2002年 67巻 6号 p.647-669, doi:10.20624/sehs.67.6_647, 社会経済史学会

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