北キヴ州

北キヴ州（コンゴ民主共和国）

北キヴ州は、コンゴ民主共和国の東部に位置する州であり、その地理的な位置から、周辺国との国境に接しています。具体的には、北にイトゥリ州、東にウガンダ、南東にルワンダ、南に南キヴ州、南西にマニエマ州、北西にツォポ州と隣接しています。州都はゴマですが、2025年2月以降、紛争の影響によりベニが臨時州都となっています。

地理と概要

北キヴ州の東部には、ヴィルンガ国立公園やキブ湖といった自然豊かな地域が広がっています。主要都市としては、ゴマ（州都）、ベニ（臨時州都）、ブテンボなどが挙げられます。人口は約815万人（2020年推計）で、キンシャサに次いで2番目に人口が多い州です。住民は主にスワヒリ語やルワンダ語を話します。

歴史

北キヴ州は、1990年代初頭から、ルワンダ紛争やイトゥリ紛争の影響を受け、第一次コンゴ戦争、第二次コンゴ戦争の主要な舞台となりました。特に東部は、ローラン・ンクンダ率いるコンゴ民主連合ゴマ派（RCD-G）の拠点となり、第二次コンゴ戦争時にはルワンダ軍に占領されました。ンクンダは、武器禁輸措置を破り、国連安保理の経済制裁対象者にも指定されました。

2017年12月には、民主同盟軍（ADF）と思われる勢力による国際連合コンゴ民主共和国安定化派遣団（MONUSCO）拠点への襲撃事件が発生し、多数のPKO要員が犠牲となりました。2018年時点でも、政府軍、民兵、自警団、反政府組織が入り乱れての武力紛争が激化しており、同年2月には、コンゴ軍が関与した紛争だけで106人が死亡、80人が拉致されるという事態が発生しています。

2018年11月には、州内でエボラ出血熱が拡大し、世界保健機関（WHO）から緊急対応チームが派遣されましたが、医療活動は紛争の影響で停滞しました。2019年2月には、ブテンボのエボラ治療センターが襲撃を受け閉鎖されるなど、医療活動への妨害が相次ぎました。

2021年2月には、国際連合世界食糧計画（WFP）の車両が武装グループに襲撃され、イタリア大使を含む3人が死亡しました。同年5月には、ニーラゴンゴ山が噴火し、キヴ湖周辺地域の住民40万人に避難命令が出されました。この噴火を受け、日本のNGO団体であるなかよし学園は、募金活動を行い、被災地への支援を実施しました。また、防災学校を設立し、日本の防災技術を伝える活動も行っています。

国際連合人道問題調整事務所（OCHA）の報告によると、北キヴ州を含むコンゴ民主共和国東部では、約120の反政府勢力が活動しており、2021年5月以降、軍と警察に完全な権限が与えられ、事実上の戒厳状態が続いています。しかし、紛争は鎮静化するどころか悪化の一途を辿っています。

2023年には、フェリックス・チセケディ大統領が軍政を敷き、ペテル・チリムワミ少将を州知事に任命しましたが、2025年1月には、チリムワミ州知事がM23の戦闘員に殺害されるという事件が発生しました。その後、M23が州都ゴマの制圧を宣言し、エヴァリスト・カクレ・ソモ少将が州知事に就任、一時的に州都をベニに移転することを発表しました。

主要都市

ベニ（臨時州都）
ブテンボ
ゴマ（州都）
サケ

州内で活動する武装組織

3月23日運動(M23)
ルワンダ解放民主軍(FDLR)
人民防衛国民会議
マイマイ

北キヴ州は、紛争、貧困、自然災害など、多くの課題を抱えていますが、国際社会からの支援を受けながら、復興に向けて歩みを進めています。

もう一度検索