北勢鉄道モハニ50形電車

北勢鉄道モハニ50形電車

北勢鉄道モハニ50形電車は、現在の三岐鉄道北勢線が電化された際に導入された、旅客と荷物を同時に輸送できる合造電車です。その誕生から終焉まで、様々な変遷を辿りました。

概要

1931年7月8日の六石 - 阿下喜間の延伸と全線電化開業に合わせて、モハニ50形モハニ50 - モハニ55の6両が、電気機関車20形20・21と共に日本車輌製造本店で製造されました。1944年2月11日には、三重県下の鉄軌道が三重交通に統合されたことで、これら6両は三重交通籍に編入され、762mm軌間用電車としてモニ221形モニ221 - モニ226に改番されました。1949年3月には、ほぼ同型のモニ227 - モニ229の3両が追加製造され、モニ227が北勢線に、モニ228・モニ229が三重線に配置されました。これにより、松阪線を除く三重交通の762mm軌間各線で運用される電車の代表形式となりました。

車体

車体長11m級の半鋼製車体を備えています。構体主要部は、窓の上下にウィンドウ・ヘッダーとウィンドウ・シルと呼ばれる補強帯を露出状態で取り付け、リベットで主要部材を接合する、当時の一般的な設計・工作手法が用いられています。内装は木製で、屋根も木製の屋根板に防水用の屋根布で覆われています。座席はロングシートが扉間に設置されています。戦前製は鋲接組み立てでしたが、戦後製は設計をほとんど変えずに溶接構造に変更され、外観がすっきりとしたものとなりました。側窓配置は1d（1）D（1）6（1）D1（d：荷物室扉、D：客用扉、（1）：戸袋窓、数字：窓数）で、前面は3枚窓構成です。前照灯は妻面の屋根上中央に白熱電球を1灯、独立した筒型灯具に収めて取り付けられ、標識灯は戦前型は腰板左に1灯、戦後型は腰板左右に各1灯、埋め込み式で取り付けられました。

主要機器

電装品は、三菱電機KR-8直接制御器に三菱電機MB-216ARという主電動機を2基ずつ組み合わせて永久直列とし、これら2組を抵抗の挿抜を組み合わせた上で直並列制御する、直接制御方式を採用しています。集電装置は三菱電機製の菱枠パンタグラフを装備しています。台車は日本車輌製造NKC-1が採用されました。ブレーキは非常弁付き直通空気ブレーキ（SMEブレーキ）が採用されました。連結器はピン・リンク式でしたが、後に自動連結器に換装されました。

運用

近代化以前

本形式は、北勢鉄道の主力車として、社名がめまぐるしく変更される間も、他線に移動することなく使用され続けました。三重線用として新造されたモニ228・モニ229は、湯の山線改軌により、内部・八王子線で使用されることとなりました。1971年のモ200形の電装解除後は、1977年の270系導入まで北勢線唯一の電動車形式として運用されました。

北勢線近代化以後

1977年の270系投入開始により、モニ225 - モニ227の3両は内部・八王子線へ転籍、残るモニ221 - モニ224についても改造が行われ、2両固定編成2本を構成するよう編成組み替えを行いました。近代化工事が施工されましたが、老朽化のため、1992年8月に全車が運用を外れ、同年9月に廃車解体されました。

内部・八王子線

1977年の北勢線近代化で余剰となったモニ225 - モニ227の3両は内部・八王子線に転籍し、両線の主力車として運用されました。1982年の近代化事業に伴い、戦前製のモニ225・モニ226が廃車となり、モニ227 - モニ229は大改造を受けサ120形サ121 - サ123となりました。その後、ブレーキのHSC電磁直通ブレーキへの改造に際し、台車の再改造が実施されました。四日市あすなろう鉄道移管後、2015年9月にサ123が引退し、残りの車両も順次引退しました。

保存車

1983年に廃車となったモニ226が四日市スポーツランドにて静態保存されていましたが、いなべ市が譲り受け、三岐鉄道北勢線阿下喜駅にある軽便鉄道博物館に移送されました。市民グループによる修復作業が行われ、2011年11月より一般公開されています。

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