北号作戦

北号作戦

北号作戦（ほくごうさくせん）は、1945年2月10日から20日にかけて行われた日本海軍の撤退および物資輸送作戦である。この作戦は、太平洋戦争の末期において、フィリピンでの戦いで敗北を喫した大日本帝国海軍が、東南アジアに残存していた艦艇を日本本土へ戻すために実施されたものである。艦艇は、重武装の戦艦や駆逐艦を含み、重要物資の輸送を行い、未曾有の危険の中で成功を収めた。

背景

この時期、日本の制空権と制海権は失われており、連合軍による通商破壊作戦により、南方からの資源輸送が困難になっていた。シンガポールの水上戦力は本土と切り離され、その一部は遊兵化する危険性もあった。したがって、日本海軍は通常の艦艇の輸送だけでなく、高速の戦艦や駆逐艦を用いて資源や人員を輸送し、本土に戻らなければならなかった。

作戦の詳細

作戦名の「北号」は、同時期に行われていた南号作戦に対抗して名付けられた。作戦は極めて危険で、前例として南シナ海で壊滅的な損害を受けたヒ86船団の運命が念頭に置かれていた。しかし、北号作戦は予想を超えた成功を収め、全艦無事に帰還したため、「奇跡の作戦」とも称されることとなった。

作戦準備は大本営海軍部からの指示で開始され、参加艦艇は日向、伊勢、そして軽巡洋艦の大淀、そして駆逐艦の霞、朝霜、初霜の6隻に決まり、1945年2月6日に出港した。艦艇には航空燃料や重要物資が搭載され、大きな危険を伴いながらの帰投が期待された。

作戦行動

北号作戦は2月10日夕刻にシンガポールを出航し、通信や連絡が難しい困難な状況の中で進行した。アメリカ軍の攻撃を受ける可能性もあったが、巧妙に行動を調整し、最小限の損害で進行することができた。艦艇はフィリピン方面に突入するふりをして北上し、敵軍の目を欺くことに成功した。

作戦中、艦隊は敵空軍や潜水艦からの攻撃を受けたが、何度かの危機を乗り越えて目標の日本本土へと進行した。完部隊は2月20日午前に呉に到着し、全艦無事に帰還したことが確認された。

結果

北号作戦は、日本海軍の歴史において事実上最後の成功した作戦となった。今回の作戦は少数の艦艇によるものであったが、積載された物資は当時の状況を考えると特に貴重だった。この成功は日本の艦艇にとっての誇りであり、一方で連合軍にとっては意外な結果であった。戦後、艦艇の指揮官や乗組員は自らの成功を誇りに思ったとされ、戦艦の日向や伊勢は「運が強い」と評された。

この作戦の成果は、当時の日本の状況を如実に物語っており、限られた資源の輸送であるにもかかわらず、全艦無事帰還したことは多くの日本人に勇気を与えた。

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