北小松駅 (江若鉄道)

北小松駅：江若鉄道の面影を今に伝える廃駅

滋賀県大津市北小松地区に存在した北小松駅は、かつて江若鉄道が運行していた時代の面影を色濃く残す、歴史深い廃駅です。1927年（昭和2年）4月、江若鉄道線の雄松駅から北小松駅まで延伸開通したことに伴い開業しました。同年12月にはさらに路線が延伸され、大溝駅まで開通しています。

北小松駅は、列車の行き違いが可能な交換駅でした。島式ホーム1面を有し、旅客だけでなく貨物の取扱いもできる一般駅として機能していました。駅構内には貨物側線も設置されており、地域の経済活動を支える重要な役割を果たしていたことが伺えます。

開業当初の年間乗降客数や貨物取扱量については、当時の記録を参照する必要がありますが、周辺地域の生活や産業に密接に結びついていたことは想像に難くありません。しかし、時代の流れとともに利用客は減少していき、1969年（昭和44年）11月1日、北小松駅は廃止となりました。

北小松駅周辺：桜並木と水泳場

北小松駅の周辺環境も、駅の変遷と深く関わっています。駅の裏手には楊梅の滝があり、かつては駅から滝までの約1キロメートルに渡り、桜並木が続いていました。「千本桜」と呼ばれたその美しい景観は、地域住民にとって誇りであり、憩いの場でもありました。しかし、湖西線の建設や農機具の通行の妨げになるなどの理由から、多くの桜は伐採されてしまいました。

昭和25年頃からは、琵琶湖の湖岸を訪れる水泳客が増加し始め、昭和37年には地域住民の手によって北小松水泳場が開設されました。夏の賑わいを見せていた水泳場は、北小松地区の新たな魅力となりました。

廃線後の跡地と現在の姿

江若鉄道が廃線となった後、その跡地には湖西線が敷設され、現在の北小松駅が開業しました。湖西線の北小松駅の駅前広場は、広々とした空間となっており、その広さはかつて存在した江若鉄道の駅の規模を彷彿とさせます。

江若鉄道の線路跡の一部は、しばらくの間、築堤を含めて当時のままの姿を残していました。高島町駅方面に向かってカーブを描いた線路跡は、往時の面影を色濃く伝えていました。しかし、2003年（平成15年）に舗装されて道路となり、その後国道161号バイパスの工事に伴い、大部分が取り壊されてしまいました。現在では、鎧岩以北の線路跡の一部が国道161号に転用されています。

北小松駅の存在は、地域の生活や歴史に深く刻まれたものです。多くの文献や写真資料から、その歴史を垣間見ることができます。現在では駅舎そのものは残っていませんが、湖西線の北小松駅や周辺の風景の中に、かつて存在した江若鉄道北小松駅の面影を見つけることができます。 地域の変遷をたどる上で、北小松駅は重要な歴史的遺産と言えるでしょう。

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