北島織衛

北島織衛（きたじま おりえ、1905年12月31日 - 1980年4月27日）は、昭和期に日本の経済界において重要な足跡を残した実業家です。大日本印刷の元会長を務めたほか、大平電工の社長や東邦紙業の取締役も歴任しました。

生い立ちと学歴

1905年、後に大日本印刷の社長となる青木弘氏の三男として東京で生まれました。幼少期に北島吉兵衛氏の養子となり、北島姓を名乗ります。学業では東京帝国大学法学部英法科に進み、1929年に卒業しました。

経営者としての歩み

大学卒業後、現在の日本の大手印刷会社である大日本印刷の前身にあたる秀英舎に入社しました。長年にわたり社業に貢献し、1955年には同社の社長に就任します。さらに、1979年には会長の座に就き、経営の中枢を担いました。

彼の経営者としての特徴は、時に「強気」と評される姿勢にありました。特に経営陣の刷新や、時に難航する労使関係の調整において、強いリーダーシップを発揮しました。これにより、組織の活性化と安定化を図り、事業の発展を牽引しました。

事業の拡大と多角化

北島氏の時代に、大日本印刷は飛躍的な成長を遂げます。彼は印刷事業の規模を積極的に拡大し、同社が世界でも有数の、そして最終的には世界最大の印刷会社の一つと数えられるまでになる礎を築きました。

さらに、時代の変化を見据え、印刷という枠にとどまらない多角化戦略を推進しました。手掛けた分野は多岐にわたり、例えば人々の生活空間に関わるインテリア関連事業、清涼飲料水の製造・販売、さらには電気部品の分野など、異業種への進出を果敢に行いました。これらの多角化は、企業としての収益源を多様化し、経営基盤をより強固なものにしました。

国際化と総合情報産業化

国内事業の拡大と並行して、国際的な視野を持って事業を展開しました。海外の主要な雑誌を日本国内で印刷する事業を手がけるなど、印刷技術をグローバルに展開しました。また、文化・情報産業としての側面を強化するため、ブッククラブ（読書クラブ）の設立にも尽力しました。これは、印刷物を核とした情報流通の新たな形を模索する取り組みであり、同社を単なる製造業から「総合情報産業」へと転換させる重要な一歩でした。

教育分野への貢献も積極的に行いました。1948年には教育出版を設立し、日本の教育を支える教科書出版事業に本格的に参入しました。これは、活字文化を通じて社会や教育の発展に寄与したいという彼の強い意志の表れでした。

公的な関わりと晩年

企業経営者として多忙な日々を送る一方で、公的な場に招かれることもありました。1955年7月には、小・中学校の教科書に関する事件に関連し、国会（衆議院行政監察特別委員会）に証人として喚問され、その立場から証言を行いました。また、メディア業界にも関心を持ち、日本教育テレビ（現在のテレビ朝日）の取締役を務めるなど、幅広い分野で影響力を持ちました。

家族

私生活においては、日本石油の監査役を務めた野守広氏の長女である野守寿氏を妻に迎えました。夫妻の間には、長男の北島義俊氏と次男の北島洋平氏がいます。

多角的な事業展開と強力なリーダーシップによって、大日本印刷を世界的企業へと育て上げた北島織衛氏は、1980年4月27日にその生涯を終えました。彼の経営手腕と先見性は、日本の産業史における重要な一頁を飾るものです。

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