北村文雄

北村文雄（きたむら ふみお、1923年4月18日 - 2017年3月1日）は、日本の造園分野において、研究者および教育者として多大な功績を残した人物です。特に造園植物学を専門とし、中でも芝や花蓮に関する研究は広く知られています。北海道旭川市に生を受けましたが、幼少期から新潟、熊本、福岡など各地を転々とし、その後は栃木や東京に拠点を移すという生涯を送りました。

東京大学農学部農学科で学び、1951年に卒業しました。さらに同大学大学院に進み、1956年3月に満期退学した後、同年7月より東京大学農学部の助手として研究者としてのキャリアをスタートさせました。この時期から、彼の研究活動が本格化します。

1965年には東京大学農学部助教授に昇任し、教育と研究の両面で中心的な役割を担うようになります。1972年には同学部附属園芸実験所に異動し、同施設は後に附属緑地植物実験所と改称されましたが、ここでも植物に関する専門知識を活かした研究を進めました。1976年からは東京大学農学部教授として、後進の育成に尽力するとともに、専門である芝や花蓮に関する研究を深化させました。東京大学での教授職は1984年まで務めました。

東京大学以外でも、多くの大学で教鞭をとりました。1977年から1993年まで玉川大学農学部で、また1977年から1984年まで文教大学文理学部で講師を務めました。さらに、1979年から1983年まで東京工業大学大学院の講師を併任し、工学分野との連携も図りました。地方の教育にも貢献し、1980年から1993年まで富山県立技術短期大学の講師を併任しました。東京大学退官後も、1984年から1989年まで信州大学農学部教授、1989年から1995年まで大阪芸術大学芸術学部教授として、全国各地で教育活動を続けました。これらの活動を通じて、彼は多くの造園や植物に関する専門家を育て上げました。

北村氏は、その専門知識を活かし、様々な学会や公的機関で重要な役職を歴任しました。1957年には文部省所管の農学用語選定原案委員会委員に就任し、専門用語の整備に貢献しました。学術審議会専門委員としては、1974年から1986年にわたり、同学術用語分科会主査も務め、学術用語の標準化に尽力しました。

造園、芝草、緑化工の分野でリーダーシップを発揮し、1983年から1985年には日本造園学会会長を務めました。また、芝草研究の分野では、1980年から1983年まで日本芝草研究会会長、1984年と1990年から1994年には日本芝草学会会長を務め、この分野の研究振興に貢献しました。日本緑化工学会でも1991年から1993年まで会長を務め、緑化技術の発展に貢献しました。

この他にも、1981年から1995年まで東京都環境影響評価審議会委員として、環境保全に関する政策決定に関与しました。また、1983年から1991年まで、文部省所管の国立科学博物館筑波植物園運営委員会会長として、植物学研究の基盤整備にも貢献しました。

長年の功績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。1972年に日本造園学会賞、1982年には第7回日本公園緑地協会北村賞を受賞しました。さらに、専門分野での貢献が認められ、1995年には日本芝草学会賞と日本緑化工学会賞をそれぞれ受賞しています。造園分野における教育、研究、文化の発展に貢献した個人に贈られる栄誉ある賞である日本造園学会上原敬二賞も、1996年に受賞しています。

研究成果や知識は多くの著書としてまとめられ、専門家だけでなく一般読者にも広く提供されました。代表的な著書には、『芝生と芝生用植物』（1966年）、研究論文をまとめた『水環境の緑地植物の生育におよぼす影響』（1980-1981年）、『芝草の植栽分布に関する研究』（1987-1988年）があります。さらに、『芝草・芝地ハンドブック』（1997年）は実用的な書として広く利用されました。専門分野である花蓮に関する著作として『蓮』（2000年）があり、一般向けの啓蒙書として『芝草物語』（2001年）や『芝生のすすめ』（2001年）、そして『樹木図鑑 (NHK趣味の園芸)』（2001年）など、多岐にわたる著作を通じて、造園植物学の普及にも貢献しました。

北村文雄氏は、造園植物学、特に芝と花蓮の研究において先駆的な業績を残すとともに、多岐にわたる教育機関での後進指導、さらには学会や公的機関での要職を通じて、日本の造園分野全体の発展に尽力しました。2017年3月1日、93歳でその生涯を閉じましたが、彼の残した研究成果、教育者としての影響、そして著書は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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