北畠昌教

北畠昌教の生涯と伝承

北畠昌教（きたばたけ まさのり）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍したとされる人物で、伊勢の国司北畠家の末裔です。その生涯には多くの伝承が紡がれており、特に彼の幼少期から逃避行についての話が魅力的です。

昌教は、祖父の北畠具教の孫であり、父は北畠具房です。一族は誅殺され、父具房は滝川一益に拘禁された際、昌教は家臣と共に脱出しました。この逃避行は、織田信長による追及を避けるためのものであり、彼の冒険はこの時期に始まります。

その後、昌教は本願寺を頼ることとなり、寺が降伏した後は津軽地方に向かい、津軽為信の庇護を受けました。この関係は昌教にとって新たなスタートを意味し、さらに彼の人生に影響を与えることになります。

鹿角地方には、昌教にまつわる伝承が残り、特に専正寺についての話が重要です。天正17年（1589年）、本願寺の弟子であった北畠の旧臣、井上専正が創建したこの寺は、昌教を守る役割を果たしました。専正は、昌教を本願寺から匿い、彼が顕如の弟子として顕寿と名乗ったという逸話も語られています。

昌教は、南朝に由来する地域である大湯の折戸山に昌斎館を築き、しばらく隠遁生活を送ることになります。その際、彼は姓を折戸に改め、死後には代々折戸姓を名乗ること、および他家に仕えないことを遺言したと伝えられています。この生涯の終わり方も、彼の強い意志を感じさせます。

現在、鹿角市に位置する大柴峠の登り口には、北畠昌教の墓とされる古墳が存在します。この霊廟には大きな松の木があり、周囲には折戸の住人たちの墓も点在しています。また、この地には、昌教に仕えて伊勢国から同行したとされる蔦江姫の墓もあり、彼女を偲んで植えられた山桜があったとされます。この桜は蔦江姫桜と名付けられ、昌教の物語の一部として人々に語り継がれています。

北畠昌教の墓は、三戸と鹿角を結ぶ重要な道沿いにあり、その歴史的背景を知ることで、彼の存在感をより感じることができます。また、彼の子孫を名乗る一族には、有馬氏や折戸氏が存在し、現代に伝わる彼の系譜は、地域の歴史の一部として今も受け継がれています。

昌教の生涯や伝承は、伊勢国司北畠家の興亡だけでなく、地域の人々や文化、歴史への影響をもたらし、今なお語り継がれています。彼の物語は、人々にとっての教訓や、歴史の大きな広がりを伝える重要な資源となっています。

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