北空港

『北空港』（きたくうこう）は、1987年11月5日に東芝EMIから発売された歌謡曲です。この楽曲は、作曲家として多くのヒット曲を手がけた浜圭介が、自身の門下生である歌手の桂銀淑と共に初めてデュエットした作品として注目を集めました。

制作の過程で、浜圭介は自身の歌唱部分について、俳優の石原裕次郎が持つ独特の雰囲気や、彼の魅力的な低音を意識して歌ったとされています。師弟による初の共演でありながら、男性パートにベテラン歌手の存在感を投影しようとした点が、この曲に独自の深みを与えています。

歌詞は、北日本の主要都市である札幌の夜を舞台に展開されます。物語の中心となるのは、北の空港からそれぞれの道へと旅立とうとする男女の切ない別れです。情感豊かな情景描写と、別れを選ばざるを得ない状況の中で揺れ動く二人の心情が繊細に描かれており、多くの聴衆の共感を呼びました。

『北空港』は、その哀愁漂うメロディーライン、心に染み入る歌詞、そして二人の歌い手が織りなすハーモニーが高く評価され、発売以降、日本を代表するデュエットソングの一つとしての地位を確立しました。特に、カラオケにおける人気は非常に高く、発売から長い年月が経過した現在でも、カラオケランキングで常に上位に位置する定番曲として、幅広い世代に歌い継がれています。

この楽曲が持つ世界観と、舞台である札幌・新千歳空港との結びつきの深さを示す象徴として、新千歳空港ターミナルビル内には楽曲を記念する歌詞碑が設置されています。この歌詞碑は、2004年7月24日に建立されました。ステンレス製で、高さ2メートル、幅93センチの堂々としたモニュメントには、『北空港』の歌詞が刻まれています。さらに、碑に備え付けられたボタンを押すと、楽曲のメロディーがオルゴール調で流れる仕組みになっており、空港を訪れる人々に楽曲の世界観を伝えています。

設置当初、歌詞碑はターミナルビルの2階センタープラザにありましたが、2010年から2012年にかけて実施された空港ターミナルの大規模な改修工事に伴い、その場所が変更されました。現在は、国内線ターミナルビルの3階にあるフードコートエリアの一角に移設されており、多くの利用者が行き交う中で、楽曲を記念し続けています。

シングル盤には、『北空港』の他に、カップリング曲として「別れのグラス」が収録されています。両曲とも、作詞をやしろよう、作曲を浜圭介、編曲を桜庭伸幸が担当しており、『北空港』と同様に、哀愁と大人の情感が漂う作品となっています。

このように、『北空港』は、師弟によるデュエットという背景、普遍的な別れのテーマ、そして舞台となった場所との深い結びつきにより、日本の歌謡史において特別な存在感を放つ楽曲です。発表から長い年月を経てもその魅力は色褪せず、これからも多くの人々に愛され続けていくことでしょう。

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