北脇昇

北脇昇について

北脇昇（きたわき のぼる）は、1901年6月4日に愛知県名古屋市で生まれ、1951年12月18日に亡くなった日本のシュルレアリスムの画家です。彼の作品は、幻想性に富んだ写実的なスタイルと、壁画的な抽象画が特徴です。北脇は、シュルレアリスムと日本文化、そして自然科学の融合を求めた独自のアプローチから、アートの新たな領域を切り開きました。

学生時代とキャリアのスタート

北脇は1910年に母親と共に京都に移住し、その後ほとんどの生涯を京都で過ごしました。1915年に京都市立銅駝尋常小学校を卒業後、同志社中学校に進学しますが、1917年に中途退学しました。1919年に鹿子木孟郎の画塾に入塾し、初めて本格的に絵画を学び始めます。その後、1930年に津田青楓の画塾にも通い、技術を磨きました。

1932年には、第19回二科展に初めて入選し、これを機に美術界に名を馳せることになります。また、同年に京都洋画協会の結成に参加し、1933年には独立美術京都研究所の委員に就任しています。こうした活動を通じ、彼は仲間と共に前衛的な芸術活動に関わりながら信念を持って創作に励むようになります。

シュルレアリスムの探求

北脇昇は、シュルレアリスムと日本固有の文化要素（仏教、禅、易経、曼荼羅）を組み合わせることによって、独自の芸術スタイルを築くことを目指しました。彼の作品には、幻想的で色彩豊かな写実的な作品が多く見られると同時に、抽象絵画も制作しており、「デカルコマニー」や「コラージュ」技法も活用しています。彼の作品は、単にヨーロッパのシュルレアリスムを模倣するのではなく、彼自身の文化的ルーツを反映させた新しい次元の芸術を追求しました。

代表作の紹介

北脇の代表作には「裸婦」（1933年）、うどを人間に見立てた「独活」（1937年）、楓の種子を飛行機に見立てた「空港」（1937年）、そして晩年の作品「クォ・ヴァディス」（1949年）などがあります。「独活」と「空港」は特に彼の「見立て」タイプの作品として評価されており、「空港」のデザインは村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』の表紙にも使用されました。

晩年と死

1948年には肋膜炎を患い、その後1950年に肺結核と診断されます。病気の影響もあってか、北脇は1951年に50歳でその生涯を閉じました。彼の遺作展は1953年に開催され、その後は各地の美術館で回顧展が行われました。

主な展覧会

北脇の業績は数多くの展覧会を通じて評価されてきました。例えば、1953年の「北脇昇遺作展」や、1997年の「北脇昇展」、2020年に開催された「北脇昇 一粒の種に宇宙を視る」などがあり、彼の魅力的な作品は今なお多くの人々に影響を与えています。

結論

北脇昇は、シュルレアリスムの理念を背景にしながらも、日本特有の文化を融合させた独自の作品を創り出しました。その人生と作品は、現在も多くの人々に感動を与え続けています。

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