北西部政府

北西政府は、1919年8月11日にエストニアのタリンで設立された反ボリシェヴィキ勢力による地方政府です。この政府は、ロシア内戦という激動の時代において、多様な政治的立場を持つ勢力が一時的に結集した結果として生まれました。参加勢力としては、立憲民主党（カデット）、社会革命党（エスエル）、メンシェヴィキなどが挙げられます。これらのグループは、共通してボリシェヴィキ政権への反対という立場を持っていましたが、それぞれの政治的目標やイデオロギーには大きな違いがありました。

北西政府の設立は、ロシア内戦における反革命勢力による政権樹立の試みの一つとして位置づけられます。この政府の目標は、ボリシェヴィキを打倒し、ロシアにおける新たな政治体制を築くことでした。しかし、その内部には、立憲民主党のような穏健な自由主義者から、社会革命党のような社会主義的な勢力までが含まれており、統一された政治目標を持つことが困難でした。特に、社会革命党は農民の利益を代表し、土地の再分配を主張していましたが、立憲民主党はより穏健な改革を支持していました。メンシェヴィキは、マルクス主義的な立場を取りながらも、ボリシェヴィキの急進的な革命路線には批判的でした。

北西政府の命運を大きく左右したのは、ニコライ・ユデニッチ将軍が率いる北西軍の存在です。この軍は、政府の軍事力を担い、ボリシェヴィキ軍との戦闘を繰り広げていました。しかし、ユデニッチ軍は、ボリシェヴィキ軍に対して決定的な勝利を収めることができず、徐々に劣勢に立たされていきました。1919年秋には、ユデニッチ軍によるペトログラード（現在のサンクトペテルブルク）への攻撃が行われましたが、ボリシェヴィキ軍の反撃により失敗に終わりました。この敗北は、北西政府にとって致命的な打撃となり、その存在意義を大きく揺るがすことになりました。

1919年12月5日、ユデニッチ軍が敗北したことにより、北西政府は事実上崩壊しました。この政府の短命な存在は、ロシア内戦における反ボリシェヴィキ勢力の脆さ、そして内部対立の激しさを象徴する出来事として捉えられます。また、北西政府の崩壊は、ボリシェヴィキ政権がその権力を着実に拡大し、ロシア内戦における優位を確立していく過程を示すものでもありました。この出来事は、その後のソビエト連邦の成立と、ロシアの歴史における大きな転換点となりました。

もう一度検索