北見市都市ガス漏れ事故

北見市都市ガス漏れ事故の概要

2007年1月、北海道北見市で発生した都市ガスの大規模な漏洩事故は、複数の地点で発生し、死者も出すという深刻な事態となりました。この事故は、老朽化したガス管と、事故発生後の初期対応の遅れが重なり、被害を拡大させたと考えられています。

事故発生までの背景

北見市の都市ガス事業は、もともと市営で運営されていましたが、財政難のため、天然ガス由来の無毒ガスへの転換が遅れていました。供給されていたガスは石油由来で、一酸化炭素を約5.2〜5.6%含有していました。2001年から転換事業が開始されましたが、財政状況から進捗は遅く、2006年4月には市ガス事業が北海道ガス（以下、北ガス）に売却されました。このため、北見市内のガス網は、他の北ガス管轄地域とは独立した状態でした。

事故発生と被害拡大

1月17日、北ガス北見支店に、春光町でガス漏れ警報機が鳴動したとの通報が2度入りました。しかし、調査の結果、微量のガスしか検出されなかったため、本格的な調査は翌日に見送られました。その後、2軒目の通報者から再び警報機の鳴動が報告されましたが、北ガス社員は警報機の誤作動の可能性を示唆しました。

18日午前、春光町の住民の女性が意識不明となり搬送先の病院で死亡しました。当初、死因は心不全と判断されましたが、実際は一酸化炭素中毒でした。その後、頭痛を訴える住民が続出しましたが、北ガスはガス漏れの特定に至りませんでした。同日、中心部の幸町でもガス漏れ警報機が鳴動しましたが、こちらも大規模なガス漏れとは認識されませんでした。

19日、春光町でさらにガス漏れ警報機が鳴動し、住民から頭痛の訴えが相次ぎました。警察からの連絡を受け、北ガスが調査したところ、2軒の家で住民が死亡しているのが発見され、ようやく大規模なガス漏れが認識されました。その後、春光町の住民に避難勧告が出され、下水道内のガスが排出されました。幸町では、春光町で避難勧告が出た後も、ガス漏れの事実が住民に知らされませんでした。また、常盤町でもガス漏れが発生していたことが後に判明しました。

最終的に、春光町では3人が死亡、12人が病院に搬送されるという惨事となりました。

事故原因と背景

老朽化したガス管:

破損したガス管はいずれも鋳鉄製で、1956年から1967年にかけて埋設された古いものでした。これらのガス管は柔軟性が乏しく、厳冬期には凍結した路面からの荷重により破損しやすくなっていました。

埋め戻し工事の影響:

事故が発生した3地点のガス管は、いずれも過去に掘り返され、埋め戻された場所に位置していました。特に、下水道管の埋設工事に伴い、ガス管が複雑な配置となっていた場所もありました。このような工事が、ガス管への応力集中を引き起こし、金属疲労を招いた可能性があります。

ガス漏れの検出困難性:

路面凍結と積雪のため、ガスが地表に漏れにくく、検出が困難でした。漏れ出したガスは、地中を伝って人家の床下や下水道に侵入しました。また、土壌に付臭剤が吸着し、ガス臭が弱まったことも、ガス漏れの発見を遅らせた要因と考えられます。

北ガスの初期対応:

北ガスは、ガス漏れが検出された時点で、自治体や警察・消防への通報、供給停止や使用制限をせずに供給を続けたため、被害を拡大させたと批判されています。実際に、死者の自宅床下では、致死濃度をはるかに超える一酸化炭素が検出されました。

事故の影響とその後

この事故を契機に、経済産業省は一酸化炭素を含む都市ガスを使用する事業者に対し、ガス種転換を加速するよう指示しました。2010年3月には、日本国内から一酸化炭素を含む都市ガスは全廃されました。

北見市では、事故現場となった春光町のガス管が交換され、2009年8月7日に天然ガスへの転換が完了しました。

類似事故

過去には、藤枝市都市ガス漏出事故や、ウンベルト・ヴィダル爆発事故など、ガス漏れが原因で発生した大規模な事故がありました。これらの事故でも、ガス管の破損や対応の遅れが指摘されています。

まとめ

北見市都市ガス漏れ事故は、老朽化したガス管、埋め戻し工事によるガス管への負荷、ガス漏れの検出困難性、そして事業者の初期対応の遅れが複合的に重なり発生した悲劇でした。この事故は、都市ガス事業における安全対策の重要性を改めて示すとともに、日本の都市ガス事業の転換を大きく促すきっかけとなりました。

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